囚人13号

ストーリー・オブ・フィルム エピソード2. アメリカ映画の功績、そして反抗の囚人13号のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

第二章はほとんど丸々ハリウッドに割かれているが、やはりそれが妥当だと思う。曰く伝説の美術監督であるW・C・メンジースによる娯楽大作『バグダッドの盗賊』、『カリガリ博士』と同じ人が『裁かるるジャンヌ』の美術を担当していたという新事実(ウルマーは大嘘つき笑)。
ドライヤーの映画制作過程も興味深く、人物のクローズアップ時の真っ白な背景も実はピンク色だったという情報は有難い。

大会社による絢爛な娯楽=現実逃避映画の中でも屈指の人気ジャンルであったコメディ、その代表格である世界三大喜劇王と唐突なジャック・タチと小津『落第はしたけれど』。
ハリウッドに吹き荒れる商業旋風に逆らう形で頭角を現した三人のリアリズム監督フラハティ/シュトロハイム/ヴィダー、『極北のナヌーク』こそ初の本格的記録映画であり『グリード』や『群衆』は商用映画としては余りにも生々しいリアリズムの傑作。

『群衆』の並んだデスクのイメージは『アパートの鍵貸します』や『審判』へと継承されていき、先述の無駄を削って白さのみを際立たせるドライヤーの話に接続されていき、また照明という点で革命的な作品はボリス・バルネットやレフ・クレショフらの師にあたるエフゲニー・バウエルの『死後』。
彼の作品に対しては専ら演劇的な印象しか抱いていなかった自分にとっては中々の衝撃。ドライヤーが後に映画館の館長になった事も知らなかったし…。

第一章の前置きに登場する泡や本作における夥しい数のデスクなど、端的イメージの類似性から視点を徐々に変容させていくスタイルが本シリーズの語り口なのかとようやく気付き始めている。
囚人13号

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