珍念

劇場版 Gのレコンギスタ V 死線を越えての珍念のレビュー・感想・評価

4.0
Gレコは富野由悠季が老年になって達した究極のガンダムと思う。
最も特徴的な点は、全ての常識的なお約束ごとよりも編集テクニックよる快楽が優先されるところだ。会話の途中でカットを切るぐらいの事は当たり前。登場人物たちの情緒は絶えず不安定だし、話の脈絡も通じない事が多い。
しかし、いかにもガンダム的なモチーフに満ち満ちている様々なディテールが富野由悠季の編集技巧によって繋がれると、とんでもない快楽が我々を包んで、思考停止させてしまうのである。

もうひとつ特筆すべきなのが、人間らしさの重視だ。リビドーを行動原理としているような主人公たちの情緒、蒸れたノーマルスーツの中をかきむしる身体表現などの描写面での人間的な表現も顕著だが、何より死霊の不在がこれまでのガンダムとは大きく異なる特徴だ。
これまでのガンダムシリーズでは、ニュータイプによる精神感応やサイコフレームなどを媒介として、死者との交流が可能であった。そして、イデオンにもガンダムにも、生者も死者も分け隔てなく全ての存在が宇宙生命として溶け合う事で理解し合えるというテーマが存在していたが、本作では他者との境界をなくすことによる相互理解という選択肢は描かれない。
死者は蘇らず、主人公たちは物語が終わった後も独立した人間として生きていく。人間を超越した存在に頼らずに、人間を人間のまま肯定しているのは、ガンダムシリーズの到達地点として画期的なことではないだろうか。
珍念

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