珍念

すずめの戸締まりの珍念のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
この映画で新海誠はジブリに手が届くところまで来たのではないかと思いました。ジブリ作品に感じるあの、画面の外側にも延々と世界が広がっているような感覚、舞台をロードムービーにする事と芹澤という人物を出す事で、新海誠は世界の広がりを実現したように思います。
ただ、宮崎駿は現実世界ではなく、我々の知らない完全にファンタジーの世界の中で同じことをするので、まだまだ及ばないところかもしれません。

東北地震から10年以上が経ち、現地の子供達にも地震のことを知らず復興後の姿が当たり前として育ってきている世代が増えてきたそうです。そんな中、アニメというポップカルチャーの先端で、地震の記憶と傷ついてきた人々のことを、忘れないように啓発する本作は比類のない作品であると思います。
幼少の主人公が母親を探して彷徨うシーンはとても正視できませんでした。もういいから、と彼女が抱きしめられた時、私自身も救われたように感じました。私のように当事者ではない人々も、たくさんあの地震で傷ついて救いを求めていたのでしょう。この作品は全日本人に対する救済の映画なのです。
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