小川勝広

目指せメタルロードの小川勝広のレビュー・感想・評価

目指せメタルロード(2022年製作の映画)
3.6
「まさかのカーチェイス!?」に隠された、音楽への深い愛情と意外性。

ハードロック、メタルのレジェンドたちが網羅されているという本作。

そのラインナップは、まさに音楽好きにはたまらないものだろう。

しかし、この豪華な顔ぶれの中にあって、
ツェッペリンやAC/DCに触れられていないという点に、
ある種の「リスペクト」を感じた。

それは、単なるオマージュではなく、
それぞれのバンドが持つ独自の音楽性を深く理解し、
それらに敬意を表しているからこそ、
あえて直接的な言及を避けたのではないだろうか。

チェロとドラムを組み合わせたシーンでの鳥肌感は、

本作が単なる音楽映画にとどまらず、音楽の新たな可能性を提示していることを示唆している。
クラシック楽器であるチェロと、
ロックの心臓部であるドラムの融合は、
一見すると異質な組み合わせだが、
その音の響き合いは、

まさに「拷問マシーン」のような強烈なインパクトを与え、聴く者の心を揺さぶる。

そして、ライトハンドテクニック。

このテクニックは、メタルギターの表現の幅を大きく広げたものの一つであり、本作でもその激しさが余すところなく描かれている。

ハルフォード兄貴ことロブ・ハルフォードの存在感もさることながら、

トム・モレロがプロデューサーを務めているという事実は、

本作の音楽的なクオリティの高さを保証するものである。

しかし、この映画のもうひとつの魅力は、
何と言っても「まさかのカーチェイス」だろう。

ハードロック、メタル映画において、カーチェイスという要素は、
一見すると意外に思えるかもしれない。

しかし、考えてみれば、ロックミュージックは、そのダイナミックなサウンドとエネルギーによって、常に前進し続けるものである。

そして、カーチェイスは、まさにその「前進」を視覚的に表現したと言えるだろう。

本作は、単なる音楽映画にとどまらず、音楽と映像、そして物語が融合した、新たなエンターテイメントの形を提示している。音楽ファンはもちろん、映画ファンにとっても、見逃せない作品である。