城岩いと

ザリガニの鳴くところの城岩いとのネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この雰囲気と内容、文章ならもっと良いだろうとさっそく原作小説を注文した。

映画で人間の感情を表現するとき、自然の風景というのはとても相性が良い。文学も同じ。個人がもつ心の表情、感情の揺れ動き、そのすべてが自然のなかにもある。

主人公の感覚はつねに周囲の木々、川辺や沼地、森に近い場所にあり、彼女を疎外する町の人間たちとは違う。
親に捨てられた経験もあって、自分の命の価値は虫や動物たちの命と等価なものであると感じている。死んで自然に帰ることも恐ろしくはない。

ザリガニの鳴くところに逃げなさい、という台詞があるが、特定の場所を指しているわけではない。

緊急避難の場所として彼女は水草の生えた沼地を選ぶが、タイトルが示している場所というのはその場所であり、べつの意味ではその場所ではない。

ザリガニの鳴くところ、というのは静かでだれにも見つけられず、しめやかに秘密が隠されている場所のことで、つまりは彼女の心のなかにある場所を指している。
城岩いと

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