かずぽん

ザリガニの鳴くところのかずぽんのネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

監督:オリヴィア・ニューマン(2022年・米・126分)
原題:Where the Crawdads Sing
原作:ディーリア・オーウェンズ『ザリガニの鳴くところ』

1969年、ノースカロライナ州バークリー・コーヴの湿地帯で少年二人が死体を発見する。それは町の人気者チェイス(ハリス・ディキンソン)で、湿地帯の櫓(やぐら)の上から落ちたのが死因だった。
真っ先に容疑者として疑われたのは、町の人々から“湿地の娘”と呼ばれて蔑まれている娘、カイアだった。彼女が逮捕されると、トム・ミルトン弁護士(デヴィッド・ストラザーン)が自らカイアの弁護を買って出た。
劇中では、チェイス殺しの裁判の様子と、カイアの回想による彼女の生涯が描かれる。

カイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は本名をキャサリン・クラークといい、幼い頃は両親と二人の姉と二人の兄も一緒に暮らしていたが、父の暴力に耐えかねて先ず母が家を出て行き、次に姉二人…というように去って行った。最後に残されたのはカイア一人だった。カイアは、出来るだけ父と一緒にいないことが上手く暮らすコツだと学んでいたが、ついには父も出て行ってしまい、6歳のカイアは一人、湿地にある一軒家に取り残されてしまったのだった。
学校にも通わず、早朝にムール貝を採っては、町の雑貨店の黒人夫婦ジャンピンとメイベルに買ってもらい、それでトウモロコシ粉やロウソクなど必需品に替えて生きていた。
「危ない時は、ザリガニの鳴くところまで逃げるんだ」という兄・ジョディの言葉をカイアはずっと守り続けていた。
年頃になると、幼い頃に一緒に遊んだ兄・ジョディの友人テイトと再会し、彼に読み書きを習う。そして恋に落ちるも、テイトの大学進学で二人の関係は終わる。
カイアは湿地の生物や植物のスケッチを描き貯めていたが、以前、テイトが「このスケッチを出版社に送ってみるといいよ」と出版社のリストをくれたのを思い出して送った。カイアのスケッチは認められて、やがて本を出版するまでに至った。
その頃、カイアの前に現れたのがチェイスだったのだ。

カイアの回想のシーンでは、湿地帯の木々や草花、沼に生息する昆虫や湿地を訪れるハクガンの群れなどが印象的で、殺人現場となった櫓の上からは全体が一望できて、それは目を見張る美しさだった。
そして、カイアが描くそれらのスケッチも色彩豊かで美しい。貝殻の絵は種類だけでも何十種類もあり、カマキリやお尻に灯をともした蛍の画もあって、その画集を実際に手に取って観てみたいと思った。

カイアの回想の合間に裁判のシーンが挿入され、ミルトン弁護士は町の人々にこれまでのカイアに対する根拠のない中傷や事実に基づかないうわさは忘れて、法廷で語られた事のみで判断して欲しいと訴える。弁護士自ら「カイアに手を差し伸べたのは雑貨屋の夫婦だけだった」と、これまでの無関心を恥じ入る言葉もあった。しかし、この弁護士は子供時代のカイアに「君には学校にいく権利がある。さあ、行きなさい」と背中を押してくれたことをカイアは覚えていた。

裁判でカイアは無罪を勝ち取り、カイアとテイトは結婚し、カイアが亡くなるまで添い遂げたのだが、ラストにどんでん返しが待っていた。この結末は、予想出来ていたようにも思うし、途中で違う人物を真犯人ではないかと疑ったりもした。画面に映し出されることのみで判断(想像)するしかないのだけれど、エンディングに流れる歌の歌詞が、その謎の答えのようにも聞こえるのだ。
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