テクノカット

ロストケアのテクノカットのネタバレレビュー・内容・結末

ロストケア(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

役者の演技は素晴らしかった。
特に松山ケンイチと柄本明。父子の絆であり呪いをまざまざと見せつけられた。嘱託殺人という選択をしたけれど、あくまで当事者の問題で、安全地帯にいる人間がそれを裁けるものなのかと疑問。
そんな悲劇を生まないためにセーフティネットが存在しているはずなのに…

ロストケアに関しては、激しく肯定も否定もできないような描き方をしているように思えた。若干否定が弱いかな?
かつて自分が救われたことを、他人にしてあげる。聖書の黄金律を体現した斯波の行動は、ある種の救済なのかもしれないが、一方で彼自身のエゴで他人に介入しているようにも思える。善悪の二元論で語るには難し過ぎる。
父が最後に折った鶴を、自身が介護する老人に贈っていた場面が印象的だった。

何となく気になったのが、斯波の罪を追及する大友の描かれ方。終盤、彼女もまた父親との別れ方に深く傷を負っていたことが分かる。その罪悪感を斯波に告白する場面が出てくるが、なぜそれを彼に話すのかが分からない。彼を死刑に追いやった罪悪感でもないし、何だろう…

あと、退職後の新人介護士の扱い…
原作未読なので強くは言えないけど、アレはどうなんだろう。動機を描かずに見せられても、テンプレな顛末にしか思えなくて違和感やった。

結果的に賛否が半々な感想になってしまったが、倫理観が揺さぶられたのは間違いないので見て良かったと思う。
いずれ自分が直面する問題なので、ゆっくり考えたい。