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ロストケアのdendohのネタバレレビュー・内容・結末

ロストケア(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

大量殺人事件を扱うが、早々に犯人が判明し『なぜ犯人(斯波)がそのような凶行に及んだか』をテーマに話が進展。

動機を主題とした構成はサスペンスとしては面白い(探せばありそうだけど)。ただ裁判前までがピークで、最後の方で長澤まさみが面会で語り始めるあたりは冗長に感じた。斯波の父殺しのシーンは良かった。

犯人の斯波、父親の介護と仕事を両立するために転職するも、徐々に父親の病状は悪化。仕事に行く事が出来なくなる。生活保護の申請に行くも門前払い。遂には父親に懇願され、嘱託殺人を犯す。
斯波のやったことには共感はしないが、理解はできる。そしてその凶行をさせるに至った社会が現実に存在する事も理解する。

原作は2013年。介護殺人など、2023年現在もはや珍しくもない。生活保護のハードルが高い事も、受給者へのバッシングも、ネットでは珍しくない。みんな自分が当事者になるとは思ってないのだろう(介護しないパターンはあるだろうが、されるパターンは全員に可能性があるのに!)

ヤングケアラーも問題ではあるが、まだ生きていけるだけマシなのかもしれない。一番恐ろしいのは、一馬力の家庭で、その一馬力が介護に取られる事なんだな。それでも生活保護が通ればまだマシかもしれないが、ハードルは高い。本当は時の政権や与党がそういった方向に力を入れてくれれば良いのだが、結局彼らは票田にならないと相手にもしない。

印象に残った俳優はやはり柄本明。地味にずんのやすが素朴な演技で良かった。

因みにロケ地は諏訪。諏訪地域って、街があって湖があって山があって、めちゃくちゃ絵になるんだね。遠景が常に綺麗で良かったです。


本作から連想した作品
・ルートエンド(漫画)
・終の棲家(ドラマ)
・高瀬舟
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