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恋する惑星 4Kレストア版のYKのネタバレレビュー・内容・結末

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

1990年代前半の香港・九龍を舞台に、失恋した男たちの新たな恋模様を二部構成で描く。このころの香港と言えば、1997年の「香港返還」を目前にしていた時代。当時の市民たちは、アヘン戦争以来(日本軍の支配期間もあり)イギリスの統治下にあった香港が、政治・経済ともにまったく体制の異なる中国に返還されることに対し、期待と不安が入り混じっていたようだ。そんな先行きの見えない日々と、恋に溺れた若者たちのどこか浮ついた空気感が、90年代香港の雑多な雰囲気のなかでエモーショナルに描かれる。

前半も後半も、ストーリーとは別に浮かび上がってくる「返還」というものへの意識。前半はその「タイムリミット」を、後半は、香港の「内と外」というものを描く。客観的に見て「怖い」と指摘されるフェイの行動も、部屋の変化に気づかない刑事633の様子を考えれば納得できるだろう。彼女は633の部屋=633の内なる世界に介入することによって、彼を外部へ連れ出そうとしている。

こうした2つのレイヤーが重なったスタイルは、今後のウォン・カーウァイ作品にも見られる。ただ、あくまでメインは「失恋で内にこもった男が、とある(異質な)女性との接触によって立ち直っていく」という恋愛ストーリー。シンプルにトニー・レオンとフェイ・ウォンがかっこいい。

あと、劇中に出てくるコンビニ、これサークルK(通称マルケー)やん!ってなった。小さいころ、家からいちばん近くにあったコンビニがサークルK。思えば今回のウォン・カーウァイ特集は、どれも自分が生まれたころの作品だ。
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