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花様年華 4Kレストア版のYKのネタバレレビュー・内容・結末

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

舞台は1962年の香港。トニー・レオン演じるチャウとマギー・チャン演じるチャンは、同じ日に同じアパートへ引っ越してくる。それぞれ妻・夫がいるため、交わすのは挨拶程度。ただ、チャウの妻はいつも帰りが遅く、チャンの夫はよく海外出張で家を空けていたことから、部屋が隣同士だった2人はなんとなくシンパシーを感じていく。夜になると、チャンはよく屋台に出歩いていた。そこで行き合ったチャウと、言葉を交わし、やがて2人で食事に行く。次第に明らかになるのは、お互いの伴侶が不倫関係であるということ。チャウとチャンは、自然と2人だけで過ごす時間が増えていくのだった。

これまで90年代香港を描き魅了してきたウォン・カーウァイ。香港返還後、本作で選んだのは60年代の香港だった。しかし、異なるのは時代設定だけではない。映像もこれまでと少し異なる。「スタイリッシュ」と呼ばれるような自由で軽い映像が多かった過去作に比べ、今回は落ち着いた、そしてFix目な画が多い。ほかにも「視点が低い」「なめ構図が多い」など、特徴的なカメラに多く気づく。こうした撮り方は、観客を物語の中に入らせながら、チャウとチャンの秘め事を近くでこっそりのぞいているような感覚にさせる。同時に、例えば「視点が低い」カメラなんかでは、お互いの妻・夫の顔を画面から切る(下半身しか映らない)など、情報を排除する効果も発揮している。2人が伴侶の不倫に気づいた夜、道端でその不倫の様子を想像で再現するシーンなんかは、スクリーンの中にもう1つの舞台を観ているような感じがしておもしろかった。

もう1つ、音楽も特徴的だ。もちろんこれまでの作品でも音楽の使い方・選曲は独特だったが、本作では、同じ曲を決まったタイミング=チャンとチャウの距離が近づく兆候?のシーンで繰り返し使っている。しかも映像は決まってスローモーション。『花様年華』は全体的に真面目な感じがするが、この繰り返しのシーンは個人的にコメディな部分で、間違いでなければ1つのアクセント的な効果があると思う。「秘め事をこっそりのぞくような」映画と言ったが、ラストはそういう体験をした観客を巻き込んで、次作『2046』へと繋がっていく。
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