ルサチマ

ヒロシマ・原爆の記録のルサチマのレビュー・感想・評価

ヒロシマ・原爆の記録(1970年製作の映画)
4.9
『一粒の麦』で扱った放射能の問題を広島の視線において語り直す批評精神によって成立したPR映画だ。原爆が落とされてから1ヶ月後に記録されたアメリカの記録映像と、当時の広島の記録写真、そして松川が撮影した70年代の広島の映像をモンタージュしていくことであらゆる時期の広島を縦軸の物語によって貫く。崩壊したまま取り残された広島ドームの存在はその後の『飛鳥を造る』における崩壊した法隆寺三重塔や、『不安な質問』における土器へと結ばれる。時代に取り残されたヒビに対して、そのヒビを過去の記録として固定化させるだけにとどまらず、未来の視点から捉えることでヒビの入り方や、ヒビの見え方を再発見しようとする松川の優れた知性が映画に宿る。
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