MasaichiYaguchi

ソウルの春のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ソウルの春(2023年製作の映画)
4.1
1970年代末に韓国民主主義の存亡を揺るがした実在の事件を基にフィクションを交えながら映画化し、韓国で2023年の観客動員数第1位となる大ヒットを記録した本作は、反乱軍と鎮圧軍の国家の命運を懸けた9時間に及ぶ攻防が圧倒的なテンションで展開する。
1979年10月26日、独裁者と言われた韓国大統領が側近に暗殺され、国中に衝撃が走った。
民主化を期待する国民の声が高まるなか、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は新たな独裁者の座を狙い、陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちを率いて同年12月12日にクーデターを決行する。
一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンは、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況に置かれながらも、軍人としての信念に基づいてチョン・ドゥグァンの暴走を阻止するべく立ち上がる。
本作のイメージビジュアルから分かるように、3~4時間かけた特殊メイクで薄毛姿に変貌してチョン・ドゥグァンを演じたファン・ジョンミンと、無欲で軍人としての使命感にあふれる信念を貫く男イ・テシンを演じたチョン・ウソンの、丁々発止の演技に心を鷲掴みされるが、この「12・12」の粛軍クーデターによる政権誕生よって、後の「光州事件」に繋がると思うと暗澹たる気持ちになってしまう。