社会のダストダス

赤い糸 輪廻のひみつ/月老 また会う日までの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

4.6
♡ H E N T A I ♡

今回の投稿から通常営業に戻ります。私の書く感想は今まで通り変態とは無縁の堅苦しい文章になるかと思いますが、真面目に無難に地道にコツコツとまたやっていこうと思います。わぁーい!

若くして落雷で死んでしまった真っ黒(仮名)は記憶を失った状態で冥界にやってくる。善行で徳を積むことで再び人間に生まれ変わることが出来ると知り、同じ頃に冥界にきたピンキーと共に縁結びの神様〈月老〉として現世の人々の縁結びをすることになる。しばらくは全く記憶の戻る兆しの無かった真っ黒(仮名)だが、生前彼が飼っていた犬が存在に気づくと、失っていた記憶を取り戻し初恋の相手シャオミーとの約束を思い出す。

『エターナルズ』を超えて台湾で1位という宣伝文句がついているので、本国台湾での公開は2021年ごろ?ギデンズ・コー監督の作品は初めて観る。風の噂で変態であるということは聞いていた。一見爽やかなストーリーに見せて瞬間変態最大風速で『チタン/Titane』を超えるような、なかなか度し難いシーンもあった。

私の好きな女優ランキング アジア部門において現在覇道を突き進んでいるワン・ジンちゃん(王淨)が出演しているということで気になっていた作品、本作のピンキーちゃん役の人です。最近、ワン・ジンちゃん観たさに台湾映画熱が高まってきたまである。Netflixでは結構作品を観られるのだが、劇場の大スクリーンでワン・ジンちゃんを浴びる機会に恵まれたことは極めて僥倖である。

冒頭、雷で主人公は瞬殺されあの世に送られてくるが、雷で頭がショートして記憶が壊れているという演出が面白い。担当のおばさんはスーパーのセルフレジでバーコード読み取れなくてイライラしてるときみたいな感じで、真っ黒(仮名)の頭を乱暴にいじってくる。頭が派手に吹っ飛んだ死人が来たときはどうしているのだろう。

真っ黒(仮名)が待たされている部屋の隣でヒステリーを爆発させているワン・ジンちゃん演じるピンキーちゃん、保険金狙いの彼氏に殺されてしまったという可哀想な子。真っ黒(仮名)がピンキーちゃんの無念を晴らした後の、「べ、別にアンタの事なんかっ(ごにょごにょ」と好き好きオーラが出まくっているのがとても可愛い。

真っ黒(仮名)の初恋の人でメインヒロインといえるのが幼馴染のシャオミー。赤い糸で巻き巻きされたり、便器の中で待ち伏せされたり、顔に血文字を描かれたりとなかなか不憫な目に遭っている。時々謎の行動をしていたことの理由が後半明らかになったときには感極まりそうになったが、こんな変態な映画で泣くわけにはいかないとグッとこらえた。

閻魔大王は浮浪者みたいなみすぼらしい格好だし、奈落の底みたいな場所には『呪怨』の親子がいるし、月老の最終試験に出てくる幽霊は昔のドリフの志村けんみたいで冥界の世界観は控えめに言ってかなり混沌としている。復讐に身を染めたら魂が消滅するや、月老の試験に落ちたら強制転生など、あの世のルールも世知辛い。

ワン・ジンちゃんと赤い糸で結ばれたいというデュフフ♡な妄想から本作を鑑賞したわけだが、今まで観た台湾映画で一番金掛かっているのではないかってくらい視覚的にも(色んな意味でだが)惹き込まれる作品だった。ワン・ジンちゃん繫がりで『僕と幽霊が家族になった件』も観ていたので、死後の世界についての台湾の価値観というのは興味深い。

なによりワン・ジンちゃんのPVとしても優秀で、本作ではこれでもかと喜怒哀楽を爆発させ、日本語の曲で踊り狂うシーンがあり、ワンコと触れあう尊い御姿を見せてくださった。とくに真っ黒(仮名)がシャオミー都の会話に盛り上がって惚気ている様子を隣で頬杖をつきながら「ケッ…」という表情で見ている姿はサムネにしたいくらい可愛い。

コメディ寄りの作品(本作は闇鍋だが)に見られる台湾映画の空気感というのは、最近の自分の作品選びの嗜好にマッチしているように思う。清純潔白なレビューしか書けない私には、このような変態が咲き乱れる映画のレビューをすることは、少々荷が重かったが謎の感動が押し寄せる良作だったと思う。劇場でやっている間でしか観れない可能性があるとも聞いたので観ておいて良かった。