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暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーローのdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.9
【異端児】

毎年恒例の「仮面ライダー/戦隊モノ」の同時上映。
うちの息子も9歳になって、そろそろ興味ないとか言うかな・・・と思いきや「え?観るに決ってるっしょ」と軽~い返事。
彼の中では「お父さんにとってのビアガーデン」くらいに恒例行事となっているようだ。
ちょうどこれが上映される頃が夏休みの開始とも被るのでテンションあがるみたいね。

ということで、参りましょう。
2本同時上映の1本目はこちら「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」です。
因みに(あばたろうせんたい)と読みます。
いわゆる「アバター(化身、変身)」にかけているんですね。
変身時の掛け声も「アバターチェンジ!」って言ってるし。

ただ、この「暴太郎」君。かなり弾けた作品です。
勿論、子供向けの番組なので「物語の完成度」だの「設定に隠されたメタファー」だの「登場人物たちの内面の葛藤」だの、そんな難しいものはありません、っていうか要りません。

毎週日曜日に息子とTVで観ているっていう事もあって多少世界観に馴染みがあるからなのかもしれませんが、これ、今までの「戦隊モノ」とはちょっと・・・いやかなり色合いの違う「異色作」であることは間違いないです。

いつもこの手の作品を観るときは「ハードルを下げて~」っていう言葉を使いますが、今作に関しては「ハードルを取っ払って」見てください(笑)
決して悪い意味ではなく、そもそも「フツーの戦隊モノ」を想定してみてしまうと(ポカ~ン)ですから。

物語としては「映画の中で『映画を撮る』」だけのお話し。
なんだけど、もうお話しがすっ飛んでいて悪者退治とかは全く頭にない。
まるで「悪ふざけ」のような物語。

「ヒーローなんて、仮面ライダーに任せておけばいいのよ!」
「・・・名乗っても・・・いいのか?」

それこそ、今まで脈々と「戦隊モノの世界観」の中だけで完結してきた「あるある」や「モヤモヤ」を自虐のようにサラリと吹き飛ばす。

しかし、不思議なことに嫌悪感が微塵も沸いてこない。
勿論コンテンツ自体が子供向けだから・・というエクスキューズはあるだろう。
でも、あれだけぶっ飛んでると決して子供に優しい内容とも言えない。
なのに子供たちは目をキラキラさせて笑いながら見ている。

「仮面ライダーとドンブラザーズ、どっちが面白かった?」
両方の鑑賞が終わって席を立つとき、それとなく息子に聞いてみた。

「仮面ライダーは新しいフォームとかも出てきてカッコよかった。でもお話しが面白かったのはドンブラザーズかな」

これが子供の直感。
結局、何がしたいのかはよく分からないけど、演者たちが作る「世界観」は子供たちの心を捕らえてしまったのだ。
勝手に大人が子供に与えようとしていた「勧善懲悪」「正義が正しい」「悪者は退治する」という固定化された価値観は、すでに子供たちの中では「お話の中の出来事」のような感覚なのかもしれない。
そこに「訳わかんないけど、何かわちゃわちゃと全力で悪ふざけ」をされたら、子供は直感的にそっちに惹かれてしまうのかもしれないな・・・と思った。

TVシリーズでも感じていた「異色感」は今回の劇場版でも如何なく発揮されている。
主人公がレッドではなく、イエローの女の子(オニシスター)って言うところから「フツーの戦隊モノ」を作る気がないんだなって事は薄々気がついていましたが、シリーズが始まって数ヶ月経過しても未だにその独特のテイストで突っ走るドンブラザーズ。

変だ。
変なんだけど、クセになる。
なんだこれは?

この意味不明な感じがなんとも言えない。
もしかしたら、数年後に一部マニアの間でカルト的な人気が出るかもしれない・・・

・・・あ、凄い大絶賛に聞えるかもしれないですが、根本的に「ハードルは全方向排除」で観ているので、普段の評価基準とはまるっきり違います。
基本的には「真面目にふざけている」という感じの作品です。
大相撲を観に国技館に行ったはずなのに、何故か土俵の上で「山崎VSモリマンのムエタイ対決」が繰り広げられているような感覚です。
しかもガチンコで。

でも、これだから「子供映画」って止められない。
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