dm10forever

踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.6
【限界点】

これのちょっと前に劇場版パート1を観て、その内容以上に「当時の時代背景」や「あの頃感じた仕事観」「仕事をする上での理想と現実」みたいな事を色々と感じたりもして(久しぶりに観てみるのもいいもんだ)としみじみ・・・。
ってな感じで、なんとなく「~2」も観たくなってそのままの勢いで鑑賞・・・してからの放置。
随分寝かせてしまいました、いや、寝かせすぎたのかもしれません。

ということでレビュー。
当時は「やっぱ、2も面白いわ~!」ってウホウホ言いながら観ていたけど、今になってちょっと冷静に観てみると、あの頃には感じることのなかった(微妙なもの)とか(オトナノツゴウ)みたいなものが色濃く浮き上がってきて、やっぱり自分も年をとったんだな~って別の意味でしみじみ・・・。

いや、面白いんですよ。
観ている間は何だかんだでハラハラドキドキ出来る「ザ・エンターテイメントムービー」なんです。
なんだけど、今になって思うのは「きっとここら辺が限界だったんだな・・・」っていう変な悟り。

(リアルだけどリアルじゃない)の描き方の限界とでも言えばいいのかな・・・。

う~ん、上手く表現できないな。
生々しいんだけどリアルじゃないっていうのかな。
いわゆる「お仕事映画」っていうジャンルとして考えると、「理想論」だけではフワフワして立ち行かないし、かと言って「現実論」だけを叩きつけられても何の味気もない日々のルーティンを見せられるだけになっちゃうかもしれない。
そこに「リアルっぽい色合いなんだけど、実はリアルではない」っていう丁度いい塩梅でバランスが取れていたのがドラマ版であり劇場版第一作だったんだと思います。

そこにあの名セリフ「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きてんだ!」っていう、ちょっと冷静になって考えたら至極当たり前なセリフすらも、あんなアドレナリンMAXの状態でブチかまされたら、そりゃ決め台詞になるて。

ってな感じで、沢山の歯車が全て完璧な連動で「いい方向」に動いたのが第一作。
となれば、当然動き出すのは「パート2」。

それ自体は悪い事ではないんです。
みんな「観たい」から。
そして出来上がったのがこの「パート2」っていう事ね。
・・・うん、悪くはない。
いや、単純に盛り上がったし面白かったと思う。

でも、これは大好きだったドラマ版の世界が広がったっていうこと以上に、「1作目ありきの作品」っていう匂いを感じてしまったんですよね。
「ドラマ版の流れ」ではなく「劇場版の続き」っていう感じ。

何が言いたいかっていうと、ドラマ版にあった緩急のバランスって本当に絶妙で、ダイジェスト版なんかを観ればそりゃエモいシーンも沢山出てくるんだろうけど、でも大半はオフビートなやり取りで構成されていて、だからこそ「ここぞ!」のシーンで大きな波が押し寄せるっていう振り子効果みたいのが良いバランスで練り込まれていたからこそ、みんな知らないうちに惹き込まれていったんだよね。

なんだけど、劇場版ってどうしても物語や場面そのもののスケールを大きくしないといけないっていう使命感が生まれちゃうのか、そのバランスがちょっとおかしくなっちゃうんですよね。
まぁどうしても2時間そこそこで起承転結を描き切らなきゃいけないから、色んな部分が大味になってしまうのは仕方がないんだけど、それでも1作目に関しては、まだ「カッコいい『躍る~』の割合が多めのエピソードだぁ」っていう「ドラマ版の温度の延長線上」でみんなが観れたんですね。
だから大ヒットしたんだと思います。

でも、実は知らずのうちに温度設定がドラマ版とは変わっていたんですね。
そしてその設定をベースに作られたのが「2作目」でした。

テーマ自体は悪くないと思います。
『上司なんてもんがいるから個が育たないんだ!』
『上司が有能ならその下で働くのも悪くない』
いや、どっちの言い分もホントその通りなんです。
良くも悪くも「(昭和の)年功序列制度」が殆どアップデート出来ないまま、結局「平成JUMP」をかまして令和の世でもド~ンと腰を据えて座っている。
いわゆる「いるだけ上司」の下にいても仕事もはかどらないし、下々のスタッフのモチベーションも上がらない。
でも、その上司自身はそれが間違っているとは気が付かない。
何故ならそれが「年功序列」だから。

でも、もしそこで「有能な上司」が導いてくれたら、仕事の効率も勿論向上するし、何より自分がこの先何十年と生きていく社会の中で「後輩の前を歩く人間」の見本となるような人に出会えるって、とても貴重な経験だと思うんですよね。

このテーマ自体はとても深いし、昭和~平成~令和とそれぞれの世代の人たちが見れば、それこそそれぞれの「刺さり方」をする引力も持っていると思います。

・・・でも、これは「踊る~」なんですよね。
時代と共に生きていくというよりは、「あの世界観をどこまで引っ張るか?」でしか活路を見いだせなかったのかな・・・。
決してそれがダメという事ではありません。
あの当時の「踊る~」の勢い(鮮度)を考えれば、その選択も間違いではないと思います。
そして、鮮度を失ったコンテンツは徐々に輝きを失っていき・・・・。

何だかんだで、劇場には最期まで足を運びました。
でも、観終わって「楽しかった」って言えたのは正直ここまでだったかな。

そんなこんなで、新作もやるみたいですね。
あ~だこ~だ言いましたが、素直に楽しみですよ。
「あの頃」を駆け抜けた青島と室井さんがどこに辿り着いたのか、興味もあるし。
それは彼らに憧れた「上司」や「部下」へのアンサーでもあると思うから。

だから、多分観に行くと思う。
dm10forever

dm10forever