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レイモンド&レイのぴーのレビュー・感想・評価

レイモンド&レイ(2022年製作の映画)
4.2
そう、赦すとか赦さないとかじゃないんだよ。それはてめえが年食ってから反省しようが死のうが変わらない。
これをできる、このまま終われる映画は今まで他に観たことなかった。
まさか葬儀のシーンで一言も話さず、それを表現してしまうとは。

「赦してしまえばきっと楽になる、俺は赦すんだ、赦したんだ」と自分に言い聞かせるレイモンドの気持ちも、「いっそ良い思い出なんてなければよかった」と溢すレイの気持ちも痛いほどよくわかる。
レイモンドのように赦してしまえればと思うことはあるけど、レイのように昔の自分を守るために絶対に父親を赦さないと俺は決めている。
レイモンドとレイが同じ名前なのは、一見すると正反対のようでありながら実はオーディエンスの中に同時に立ち上がりうる存在だからか。

周囲の人間から話を聞いたり、遺言を実行しようとする中で「あれ、もしかしてやっぱり親父にとって俺たちは代えの効かない存在だったのでは…?」と一瞬思ってしまった途端、そんな期待を間接的に打ち砕くように現れる“代え”の存在(たち)。
子に限らずではあるけど、数が多ければそれだけ相対的に一人当たりの価値は下がる。あんな残酷な話はない。

わかってたけど主演2人がやっぱり最高。
それぞれの体の重心の違いが絶妙で、互いの演技もバッチリ噛み合っていて、「これが役者だ…」と思わされるなど。
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