LudovicoMed

家庭 4Kデジタルリマスター版のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

3.6
「家庭的な女がタイプのオレ一目惚れ」したドワネル、秒で倦怠期

トリュフォーの分身として映画内で人生を歩むアントワーヌドワネルの結婚生活そして、父になる辺りまで物語った本作。紆余曲折を経て落ち着いた生活模様に特化した今回は毎日の何気ないルーティン語り口軸にこじんまりした内容となっていた。
ただ、スクリューボールコメディセンスが炸裂しており是枝の映画や『ほえる犬は噛まない』で稀に見かける団地ドタバタコメディに分類された個性的な住人とのやりとりが無性に面白い。そのせいかトリュフォーの人生の一部、もしくはジャンピエールレオの成長を見守る通過儀礼として様々な入れ子に意識が向きがちなアントワーヌドワネルの冒険シリーズに、ある意味モラトリアム期間の風通しの良さを感じさせる。

自称25年部屋から出たことないジジイ、時間キッカリにオペラへ向かう夫婦、等間隔で顔を出す近所のガキンチョ、あらゆるギャグの引き出しから繰り出されるので映画自体が猥雑になっていく主張がウケる。
ドワネルが就職する際の採用間違いや赤ちゃんが産まれた報告を男の子と女の子がレイアウトされた雑誌のページを指差し、遠くのドワネルに性別を知らせるくだりが最強にセンスオブワンダー。ウェスアンダーソンはこういうことを『フレンチディスパッチ』でやりたかったんやろなあと地団駄踏んでそう。
またトリュフォーの結婚観に触れられるという意味ではベッドシーンの寄り添いが特徴的であった。夫婦といえど繋がりに安心して互いの自分の時間を尊重し合いがち。そんな毎日に2人きりのコミュニケーションが生まれる時間帯を幸せそうに映す。阿吽の呼吸で腕を回してのキスの仕方とかキュンとしたし、本で口元が隠れるショットの素敵さ、あそこには2人だけのドラマが存在している強い雰囲気を醸し出す。

ところがだ、トリュフォー映画は今気づいたけど三角関係に拗らせたがるクセがある。なのでやっぱりドワネルは不倫に走りお相手は胡散臭い大和撫子の日本人。彼女からのバラの贈り物がニアミスする浮気のバレ方がまた最高だったが単に和風観に惚れてるだけやろ。
と思えてならないほどドワネルがドンドンダメ男になっていく。もうどっちを応援してよいのやらと観てたが最後までスクリューボールコメディ傾倒で微笑ましく見守れる作品でしょう。

気になった点としてドワネルが唐突に物事の終わりがキライだと会話する不意に「映画の終わりもキライ」と言いかけ「何でもない」と話題を引っ込める。ジャンピエールレオ並びに演じるドワネルがまだまだ自分を物語り続けたいと深読んじゃったけど、そういう意識も今シリーズの醍醐味か?。
モラトリアム期間なのでアンニュイな感じだが浮気ぐらいから右肩上がりに面白くなり夢中になっていた。
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