・ジャンル
ゾンビホラー/サスペンス/社会派
・あらすじ
舞台はアメリカ東部
亡き父の墓参りにやって来たジョニーとバーバラの兄妹は墓地で異様な風体の男に遭遇する
間も無くバーバラは男に襲われ守ろうとしたジョニーは揉み合いになり殺されてしまう
夢中で逃げた彼女が人気の無い民家へ逃げ込むと間も無く黒人男性のベンが現れる
彼もまた奇妙な集団から逃げて来た人物であった
ベンは身を守る為、家を補強し武装
だがバーバラは事態を飲み込めず兄の死も受け入れられぬまま茫然自失の状態
やがて地下に隠れていたクーパー夫妻、そしてトムとジュディのカップルの存在が判明
協力を訴えかけるベンと利己主義なクーパー夫妻の夫ハリーの間で揉めつつも対策を練っていく
そしてラジオとテレビの報道で明らかになる襲撃者達の正体
彼らは生者を襲い貪り食う死者達であった…
・感想
ジョージ・A・ロメロ御大による現代ゾンビを世に送り出した名作社会派ホラー
ホラー好きとして基礎教養の為に履修
時代が時代なだけに古典的な大仰な劇伴や芝居などは臭く感じなくもなかったけど想像以上に社会派作品としての出来が高く且つホラーとしてのじりじりと神経を削ってくる恐怖演出や心理描写が素晴らしかった
ヒロイン、バーバラの兄ベンの発言から窺い知れる死者への経緯の欠如
ベンの死を受け入れられず終始憔悴していたバーバラ
家父長制の権化とも言うべき独善的で人の意見に耳を傾けないハリー
ハリーの態度に痺れを切らす妻ヘレン
穏健派でベンに協力的な好青年トム
そんな彼を思うあまり臆病になる恋人ジュディ
ゾンビ退治の事しか頭になく最悪の結末を招いてしまう保安官コナン
それぞれの心理とその絡み合い方が極めて生々しく緊迫感を一貫して感じさせる
加えてベンは黒人である事もあり本作で最も有名であろう風刺の要素として機能している
人格や思考能力を失ったゾンビ達との格闘をレイシスト白人達の集団暴行になぞらえるというセンスは圧巻の一言
惑星探索による放射性物質の影響という設定も過度な文明発展への渇望を示唆している様で印象的
展開にしても終盤までは生者の転化が描かれず焦らし切った所でバーバラの兄ジョニーやクーパー夫妻の娘カレン、そしてクーパー夫妻自身と最悪の形で起こるのが悲劇的で最高
結末や静止画を多用したラストも単にベンが死ぬだけでなく保安官が罪を自覚せず終わってしまうというのがまた惨い…
身体破壊描写がほぼ無い中でゾンビの群れによる屍肉喰らいのインパクトでカバーするゴア描写も巧み
最早ゾンビ映画のルーツにして最高傑作なんじゃないか…
とりあえず一旦三部作は完走するつもり
ロメロ御大の手腕を考えれば出来には期待出来そうだしとにかく楽しみ
しかしやっぱモノクロのホラー映画って良いよね…