南

哭悲/The Sadnessの南のレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
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ヒト凶暴化ウイルスに感染した人々が台湾の街で大暴れ!

凄絶すぎるゴア描写が魅力のパンデミック映画だ。

電車内で首を刺された男性の血しぶきが天井にドバッと噴出するシーンなど、椿三十郎もかくやという勢いで爆笑。

警備員の男が『グリーンインフェルノ』よろしく集団で襲われ医療器具で体を切断されるシーンも、冗談みたいな血のりの量で最高だ。

人間の頭部がハチャメチャに破壊されるシーンもあり、『シンシティ』や『ドライブ』同様に快哉を叫んだ。

さらに感染者たちが血みどろの殺し合いをするだけでなく、性欲を剥き出しに男女見境なく暴行に及ぶシーンが複数ある点もユニーク。

電車通勤中のヒロインに対してセクハラをかますおじさんの生理的に無理な発言で、「気持ち悪い性欲」という要素は序盤から提示される。

このおじさんの被害者意識、逆恨み、性欲が本当に気色悪い!

数々の蛮行シーンも含めて間違いなく今作のMVP役者だ。

ただ今作、編集とカメラワークが冗漫でダレる部分が多いのが非常に勿体ない。

パニックやスリラー作品で緊迫感を際立たせるためには緩急が大切。

とはいえ今作の場合「緩」の比重が大きすぎる。

例としては以下のシーケンス。
・病院の待合室
・軍のお偉いさんの演説
・ウイルス博士の説明くさい長広舌

※細かいが、
「博士が防毒マスクやフードをかぶりヒロインを部屋から連れ出す」
という30秒ほどの流れなど無駄すぎてツラい。

例えば以下のように繋げばテンポが良くなり緊張感も演出できたはずだ。

1:博士が防毒マスクをつけ始める
2:同時進行で行動している主人公男性が病院に向かう様子を数秒挿入
3:完全防備の姿になった博士が銃をチラつかせてヒロインをおどす
4:2に同じ
5:博士とヒロイン、部屋から出る
6:主人公男性とハチ合わせる

100分あるが、85〜90分に収めれば十分な内容。

『28日後』や『ワールドウォーZ』を観た後に近い、不完全燃焼のモヤモヤ感が残った。

それから「理性をかろうじて残した感染者の不気味な口調や言動」には「もっと気色の悪い口調にしてほしいな」と物足りなさを感じてしまった。

『アイアムアヒーロー』ゾンビ役者の演技が高めの基準として自分の中に用意されているからだ。

ともあれ「とにかくグチャドロのゴア描写が見られればOK!」という方にはオススメのグロさです。

あとエンディングテーマのグラインドコアがかっこよかった。
Ashenというバンドの"Crying City"という曲らしい。
南