しちれゆ

EO イーオーのしちれゆのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.9
イエジー・スコリモフスキ監督の7年ぶりの新作だそうである。御歳85歳。私は監督の『早春』″DEEP END″が大好きで円盤を買わない主義なのに色々おまけが付いてた(Tシャツまでついてた)特別版を買ったのである。そして勿体ないから開けてないのである。Tシャツもどんなのか見てないのである(今のところ人生唯一の円盤)。買ってからかれこれ7~8年経ってる。ま、監督が好きというより若きジョン・モルダー=ブラウンが好きなのであるが(勿論物語も好きよ)。

さて今回はロバのEOのロバ生のお話。舞台はポーランドらしい。動物には人間と同じ感情はなくて「EOの目が…」と深読みしすぎるのもアレだが、ロバにだって優しかった人間の記憶とその人間への愛情はあるのかも。人間に使われて気まぐれに可愛がられて煙草の煙を吹きかけられて殴られて死にかける。人間と動物の一番の違いは自己愛があるかどうか。自己愛はエゴ(自我)と言っていい。これが人間を面倒にする。動物はシンプル。だからEO自身は自分を可哀想と思ってない。ロバ生を振り返ることもない。
このお話は人間の愚かさや少しの優しさをEOの目線というより両者の対比により際立たせる寓話である。そして淡々と進むかに見えたお話には殺人も出てくる。エゴの究極の行為である殺人が主軸ではなく余談的に描かれるのが恐ろしい。生まれてから死ぬまで世の中が自分中心に回ってる人間と自意識のないロバ、生きづらいのはどっちだろう。

ポーランドではロバはサラミになるということに驚いた。
イザベル・ユペールが出ていたのを知らなかった。
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