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EO イーオーのencoreのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.8
ストーリーは寓話的な意図が先行しすぎて退屈だけれど、映像的にはなかなか楽しめた。
テーマ的にも幸福なラザロを思い出した。あちらのほうが好きな映画だけれど。

何度も馬とロバの差異が強調される。それは家畜化されいわば去勢されたロバと野生を残している馬の差異であり、透明化されたあまりにありふれた労働の苦しみと適応の残酷さとの差異でもある。つまりロバははじめから社会化されていて、そのことによって逆に社会の側を逆照射するような視点を負わされている。
日本的な文脈に当てはめるとロバは真面目系クズで馬はヤンキーともいえるかもしれない。…と考えるとなかなか切ない。

にしても人間嫌いが行き過ぎて安易に見えるシーンが多かった。サーカスの女の露骨に性的な雰囲気は個人的には呪いにも見えた。あれがなかったら最後道楽息子に拾われて幸せになるルートもじゅうぶんあった気もする。

ヨーロッパ文化のなかの驢馬の表象がどんなだったかは改めて確認したいところ。お伽噺だったり、ニーチェの著作だったり。
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