がぶりえる

別れる決心のがぶりえるのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.2
パク・チャヌクってどんな人なんだろう...って彼の作品をみていつも思う。
「オールド・ボーイ」と「お嬢さん」は韓国映画の中でもトップクラスに好きで、他のパク・チャヌク作品も大好き。今や、華やかに彩られた各カットの映像美と見るものの心を抉るエグいストーリーがパク・チャヌク印となっているが、圧倒的な映像の「美」と人間の「ドス黒さ」をついてくる強烈なストーリー、という本来相反するはずの2つのパワーが一つの画面の中で拮抗し合うからパク・チャヌク作品はこんなにもパワフルなんだと思う。

本作も洗練された映像美の連続。色の使い方がとにかく上手い。印象的だったのは、青壁の前にオレンジ色の服をきたソレが映るシーン。何気ないカットなのだ、凄く綺麗で気品を感じる。昔から色を立たせる映像を撮るタイプの監督は沢山いるが、彼の様に本当に器用にこなす人はごく僅かだと思う。「シンプルに映像を見ているだけで楽しい」という感覚は映画でしか味わえない快楽。
色に加えて今回はカメラワークや編集もおしゃれで独特だった。各所にみえるパク・チャヌクの遊び心とチャカチャカした独特の編集が新鮮味があって面白かった。

韓国映画は「行くとこまで行ききっちゃった人間の破滅の物語」的な作品がま〜多い。お国柄が関係しているのかも(?)しれないけど人間の愚かさとか、腹黒さとか、全部むき出しの欲深い人間を描く作品が多い。そういう作品を作る作り手が多いのもすごいけど、そういう映画がヒットする韓国の国民性もすごいと思う。本作も、生真面目な刑事がソレが美しすぎるあまりどんどん彼女に取り込まれていくのだが、その様がなんとも愚かでエキサイティング。危ういと分かっていながら自分のコントロールが効かず、ドツボにはまって行くこの愚かさよ!!整っていたものが愛の魔力でぐちゃぐちゃに溶かされて行く快感とでもいうのだろうか。見てて妙な開放感と気持ちよさがある。そして、見てるこっちも刑事とおんなじ気持ちで、ソレの美しさと危うさを欲していってしまう。誰でもタン・ウェイの虜になるって、こんなん。めっちゃ綺麗やもん。

寂しさを残すラストもお見事の一言。ああいう形でソレの最期を描くことで、彼女の魔性さをより一層強め、観客にソレへの愛着を強めさせられた思う。その感覚は「オールド・ボーイ」のラストにも近い。激しく波打つ海岸をソレの名前を叫びながら歩く刑事の力強いタッチの画を映しながら締めくくるのも素晴らしい。

あと、最後に、パク・ヘイルの目怖かった。