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CLOSE/クロースのtomoのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

いつどこで起きてもおかしくない日常的な会話やちょっとした気まずさやすれ違いが哀しい結末に繋がってしまう。日常と地続きで奈落の底に突き落とされる唐突感、呆気なさ。必死で日常を取り戻そう取り繕うとする人々が、ふとした瞬間に耐えきれず咽び泣く姿が涙を誘う。
誰かが悪いわけではない。少年2人に好奇心からちょっとからかうような問いかけをした少女たちにもあからさまな揶揄や侮蔑の色は感じられない。それを気にして新しい趣味や友人を作り親友と距離を取ってしまうレオも、思春期の少年らしい繊細さ故にそれに耐えきれずレオを責めてしまうレミも、進学という環境の変化の中で誰にでも起きうるすれ違いである。しかしながら悲劇はレミがあっけないほど唐突に全てを終わらせてしまったこと、それほどまでに彼にとっては親友が大事だったということ。レミの両親は辛い環境になりながらむしろ周りのために立ち直ろう普通に振る舞おう誰も責めるまいとしていたのに、母はどうしてもレミに起きたことを知りたくて、レオの言葉に初めて感情の昂りを見せてしまい、しかしすぐにそれを後悔してレオを抱きしめる。レオを支えようとする兄や両親、クラスメイトや先生たち、みんなそれぞれの優しさや気遣いを見せる。悪人はおらず、ごく普通の人たちのごく普通の日常の中で起きた話なのだ。
レミに実際に何があったかの詳細は語られないが、繊細な子供たちを情報から遠ざけようとすることは当然でありつつ、映画としてはそれが却って呆気なさや喪失感の演出に一役買っているとも言える。
登場人物それぞれが傷ついたが、きっと彼らはお互いの存在や時の流れにより乗り越えていくだろう。しかし辛い出来事を乗り越えていつか立派に大人になったとしても、レオはもう以前の自分と決して同じではなく、避けようのない過去との断絶や喪失感を孕んで生きていくのだろう。ラストカットの彼の表情が、視線が、切ないほどにそれを表現しておりいつまでも心に残った。
間違いなく良作であるが、人には勧めづらい。これを見てほしいと伝えることが私には難しい。この映画のような哀しい思いをする人が1人でも少なくあってほしいが、恐らく多くの人が程度の差はあれ人との別れの際に後悔を感じた経験があり、そういう人たちの心に思いの外刺さってしまうかもしれない。
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