第75回カンヌ国際映画祭で「観客が最も泣いた映画」と称されグランプリを受賞したとか。
いや、ちょ、待って。
ぼ、僕、な、泣いていない。
涙腺の緩みは個人差があるよね。
13歳のレオとレミは大親友。中学校に入学した初日、親密すぎるあまりにクラスメイトにからかわれたレオは、レミへ次第にそっけない態度をとってしまう。気まずい雰囲気の中、二人は些細な事で大喧嘩に。そんな心の距離を置いたままのレオに、レミとの突然の別れが訪れる—— 。
色鮮やかな花畑を駆けていく少年達。
一緒にいる事が普通の日常である彼らの瑞々しいひと時を紡ぎ描かれる様子は、ドキュメンタリーを観ているかのようにリアル。
「付き合っているの?」
2人の仲を引き裂いたのは、
クラスメイトの女子からの問い掛け。
彼女にとっては他愛のない一言でも、彼らにとっては自分達の"普通"が"異常"なのかも知れないと、彼らの常識が覆される程の一言。
レミとギクシャクし始めてからアイスホッケーに没頭するレオは、少年が"男らしく"成長する過渡期を象徴しているように思えた。
親友以上だったのかも。
それはいずれ恋愛へと発展したのかも。
それともいすれにしても離れ離れになっていたのかも。
そんな事は誰にもわからない。
彼らにもわからない。
でも、もうそれはどうしたって確認のしようがない、永遠に想像の域を出ない事。
もう、レミはいないのだから。
レミの母と何度も向き合おうとするレオの姿が印象的。
大人と子供の狭間で揺れる若い心。
彼らをからかった少女は少し大人びていたのだろう。でも、わざわざ何かしらのレッテルを貼ろうとする悪しき大人の風習を真似てしまったのが、直接的ではないにしろ悲しい結末を招いてしまった。
僕の涙腺はそこまで緩みはしなかったけど、カンヌの評価も頷ける。
監督は「Girl/ガール」のルーカス・ドン。個人的にはあちらの方がかなり衝撃的だった。