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私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスターのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

2.0
[互いを憎しみ合う姉弟の子供じみた喧嘩集] 40点

2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ひらすら評判の悪いアルノー・デプレシャン長編最新作。前作『レア・セドゥのいつわり』は同年に新設された"カンヌ・プレミア"という謎の接待部門で消化上映されていたが、今回はその前の『ルーベ、嘆きの光(ダブル・サスペクツ)』に続いて七度目のコンペ選出となった。冒頭、アパートの一室である少年の葬儀が行われている。そこに来たボルクマンという男は少年の父親ルイに猛烈な勢いでブチギレられ、彼の妻でルイの姉アリス共々アパートから放り出される。次のシーンでは、成功した作家であるルイが、成功した女優であるアリスの悪口を延々と書き連ねた新作を読んで、アリスが落ち込んでいる。と、このように、ルイとアリスは50代にもなってガキみたいな喧嘩を続けている。互いへの憎しみは相当なもので、二人が病院の廊下で出会ってしまうシーンがあるんだが、ルイはアリスの足音が聞こえ始めただけで逃げる準備を始め、アリスはルイを見て卒倒するのだ。しかし、二人の間に何があったかは全く描かれない。どうやら二人共、毒親に育てられたようだが、それは双方が歪んだ原因にはなりそうでも姉弟の確執には繋がらない。まぁ確かに親しい友人とかでも、これまで許せていたことがある日突然閾値を超えて許せなくなり、芋づる式に嫌いな要素が表面化してしまうというのは分からなくもない。そして、憎しみに核がないからこそ、あのあっさりした展開につながるんだろう。

モヤッとはするが、何を争っているのか、という第一関門を突破したところで、この映画には更なる試練が待っている。どうでもいい人やシーンが多く、おセンチな音楽とわざとらしい天候変化と多用し、アリス役のマリオン・コティヤールとルイ役のメルヴィル・プポーが引くほどの過剰演技をしているのだ。途中からこっちが恥ずかしくなってしまった。これがなかったらもっと好きになれたはず。そして、唐突のアフリカエンド…自分を見つめ直す欧州人はアフリカ行きたくなるんだろうか?(オーストリア映画『セルヴィアム』も同じ感じだった)ちなみに、この年のカンヌ・プレミア部門にはセルジュ・ボゾンとかエマニュエル・ムレとかドミニク・モルがいたので、そっちをコンペに昇格させていた方がダメージも少なかったのでは?と考えるなどした。デプレシャン、カンヌ映画祭の偉い人の生殺与奪権でも持ってるのかしら?
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