ジジイ

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのジジイのレビュー・感想・評価

3.3
この作品は20年前に企画され、ベストなタイミングを測って世に出されたのだという。監督が指摘するように、われわれの身体にはすでにマイクロプラスティックなどの合成樹脂が蓄積しつつあるようなのだ。加えて添加物にゆるい日本にあっては、保存料などの化学物質がバケツ一杯分、個々人の身体に蓄積しているという話もある。そうした状況に対する危機感とともにこの作品もこれまでのように「創造性とアート全般についての比喩、混沌から美を生み出し空虚から意味を作り出すことができるというメッセージ」も含んでいる。アイデアは面白いのだが、正直過去作を超えているかと言われると、そこまで心を揺さぶられることはなかった。





以下ネタバレです。






追記 ベッドやチェア、解剖機器のディテールはどことなくフランシスベーコンの絵画を思わせる。ソールは老いた監督自身であり、新しい臓器とはその新作映画なのだろう。身を削るようにして体内に宿してきたソレを観衆の面前で取り出すパフォーマンスは、映画作品をアートとして「公開」することそのものである。とすれば「内なる美コンテスト」とは映画祭なのかもしれない。「私をショーに出して」とソールを誘惑するティムリンはさながら、野心に燃えた新進女優のようである。
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