ジジイさんの映画レビュー・感想・評価

ジジイ

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四月の永い夢(2017年製作の映画)

4.2

冒頭の桜並木と菜の花の中にたたずむ喪服姿のカットが哀しく美しい。恋人に永遠の別れを告げられたその年の「四月」に、ずっと頑なに閉じこもっている彼女の心が、一瞬にして伝わってきて胸が苦しくなるのだ。中川監>>続きを読む

ラブレス(2017年製作の映画)

4.0

ロシア語の原題は「非愛」であり単に「愛が無い」というより、より強く「愛の対極」をイメージする言葉だという。ニュアンスとしては「憎しみ」ではなく「無関心」が近いのではないか。ここに登場する夫婦は確かに最>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

身体が小さく難読症もあって勉強がまるでできなかった彼は早くからその才能が突出していた映画の世界にしか逃げ道がなかったようだ。逆に言えば運命の神がこの稀代の大監督を何が何でも世の中に産み出そうと必死だっ>>続きを読む

エレナの惑い(2011年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

「父帰る」のアンドレイズビャギンツェフ監督作品。面白かった。端正で静かな画角から伝わってくる、今にも何かが起こりそうな緊張感がたまらない。寝室こそ別であるが、とても仲睦まじい老夫婦に見えるウラジミルと>>続きを読む

好男好女(1995年製作の映画)

3.4

1950年代の台湾で国民党政権による政治弾圧が起こる。いわゆる「白色テロ」である。監督としてはこの事件を本当は正面から描きたかったと想像するが、台湾現代史の中で長らくタブー視されてきた題材ゆえに、この>>続きを読む

スワンソング(2021年製作の映画)

3.6

記録。タイトルは「芸術家が亡くなる直前の最高の仕事」の意。監督によればこの作品は「失われゆくゲイカルチャーへのラブソング」であり、その通りだと思った。ウドキアが伝説のヘアドレッサー(実在)に完璧になり>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.5

マルチバース全体から見れば、ランドリー店バージョンのエブリンはかなりの負け組なのかもしれない。だがその落ちこぼれゆえに無尽蔵のポテンシャルがあるという設定は泣かせる。それはまるで未だ何者にも成りきれて>>続きを読む

オール・ザット・ブリーズ(2022年製作の映画)

3.7

「生きとしいけるものすべて」HBO製作のドキュメンタリーで本年度オスカーノミネート作品。世界一人口の多い都市デリーで20年にわたってトビを中心に猛禽類の保護活動を続ける兄弟の物語。冒頭から工場の煤煙の>>続きを読む

オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

記録。コンパートメントNo.6のユホクオスマネン監督作品。実話ベース。バスに乗る直前にプロポーズするシーンはよかったが、そもそもの二人の関係性が曖昧で、そこまで乗れなかった。ラストすれ違った老夫婦は実>>続きを読む

破戒(2022年製作の映画)

3.5

原作は未読。そもそも「戒」の字を気にも止めていなかったことに今さらながら気づいて恥ずかしかった。戒めを破る。この言葉の重みと切実さに支配された物語に胸が潰れた。原作小説から100年以上経過した今日でも>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.5

しつこくてまあまあ苦痛を感じた2時間半だった。レストランのやりとりなんかは余裕で笑っていたのだが、船上に移りキャプテンズディナー、マルクス主義云々の頃になると、ちょっとしんどくなってきた。言いたいこと>>続きを読む

ちひろさん(2023年製作の映画)

4.1

今泉力哉監督作品。元風俗嬢という原作マンガのちひろさんを見る限り、その外見は有村架純とは1ミリも似ていない。この映画のキモはこの一風変わった主人公に彼女を据えたことだろう。例えば一見ドライな他人との距>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.7

「1917」のサムメンデス、ロジャーディーキンスとオリビアコールマン。画面は美しいし演技も申し分ないのだけれど、そこまでハマらず。監督の青春時代を描いているようで、コールマンは当て書きだそうだ。「ベル>>続きを読む

悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)

4.2

すっかり忘れていたが初見ではなかった。冒頭から素晴らしい。コッポラのアイデアはここからだとすぐに分かる。先の読めない展開にも唸るが、脚本も緻密に練られていてドラマとして全く無駄と無理がない。結果として>>続きを読む

こちらあみ子(2022年製作の映画)

3.8

記録。なかなかヘビーで悲しいお話だった。意図的にひとを傷つけるような悪い人間がひとりも出てこないことが、この救いのない物語のやるせなさを際立たせている。タイトルに滲み出る彼女の悲痛な呼びかけに、ただた>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

「ビィフォアサンライズ」のような心地よい余韻の残る映画。原作があるが時代設定を10年ほど遅くしているという。主役の2人が自然に自由に演じている雰囲気がいい。列車の旅も終わりに近づき食堂車で打ち上げる時>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

3.7

記録。観る予定はなかったがアカデミー賞作品賞ノミネートを受けて。原作はドイツ人によるものだが映画としては初めてドイツ語で製作された。この最前線はずっと膠着状態にあり、ほとんど動かなかったにも関わらず、>>続きを読む

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

記録。途中までは笑いながら観ていたのだが、結果ちょっと受け付けなかった。狂ってる人間なら狂ってるなりの演出上のリアリティが必要だと思うが、小手先の不条理劇を狙いすぎな作り手の意図と深みのない演技の相乗>>続きを読む

君はひとりじゃない(2015年製作の映画)

3.9

妻を亡くした男と拒食症の娘のディスコミュニケーションと再生を描く。喪失感や孤独感からたったいま目の前にいる相手に向き合えないというテーマは決して珍しいものではないが、この女性監督の飄々としたブラックユ>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

凄まじい画力の連続で圧倒されて飽きないのだけれど、3時間観終えて感動したかと言われるとそこまでじゃないなぁという印象だ。度肝を抜くオープニングこそクレイジーでワクワクしたが、やがてサイレント俳優の衰退>>続きを読む

揺れるとき(2021年製作の映画)

3.7

本人や当事者にしか分からない事実と感情。人生の大半ははそんなひっそりとした、誰も知り得ない物語でできている。子どもだってひとりの大人を真剣に好きになるし、大人が子どもにこっ酷く傷つけられることもある。>>続きを読む

終電車(1980年製作の映画)

4.0

記録。面白かった。マリオン以外のキャストには実在のモデルがいるという。ドヌーヴもドパルデューも自然体でよい。トリュフォー少年がその眼で見た占領下のパリの空気が、実体験を素直に詠んだ俳句のようにリアルに>>続きを読む

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

記録。「イニシェリン島の精霊」の監督および主演2人が顔を合わせた2009年の作品。レイとケンのコンビが「精霊」の2人にダブって見えて面白かったが、さすがにラストは無理があって残念。「スリービルボード」>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。監督のマクドナーは初めから主演の2人の役者を想定していたのだという。友達同士の小さないさかいが、やがて笑えない戦争へと発展する。時は1920年代で折しもアイルランド本島は内戦の真っ只中。そ>>続きを読む

沈黙(1962年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。妹の情事の告白を聴く時の姉の大きく見開いた眼が忘れられない。ホテルに訪ねてきた男と別の部屋に入ろうとして鍵をガタガタいわせてる時のカメラが流れるように右に振れて、少し離れて見ていた息子を映>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ジョーダンピール監督作品。面白かった。インタビューによれば「ジュラシックパーク」「キングコング」などに影響を受けており、野生動物を支配し見せ物にしようとする人間の傲慢さとその代償という構図が物語のベー>>続きを読む

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)

-

記録。こーゆー作品で感動できない自分は冷たい人間なのだろうか。序盤こそよかったが尻下がりに感情が冷めていった。これ実話じゃなかったらキツいなぁと思いながら。きっと若い監督が思い入れたっぷりに作っちゃっ>>続きを読む

ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

4.0

10世紀のアイスランド。ヴァイキングの王子アムレートは叔父フィヨルニルに父ホーヴェンディル王を殺されてしまう。アムレートは復讐を誓いながら王座奪還に向けて動き出すという物語。アムレートはスカンジナビア>>続きを読む

FLEE フリー(2021年製作の映画)

4.0

記録。2021年夏の米軍撤退とタリバン復権。今なお200万人を超える難民を生み出しているというアフガニスタンから90年代にロシア経由でデンマークに脱出した少年の物語。強制送還の恐怖に怯えながら家族で身>>続きを読む

山河ノスタルジア(2015年製作の映画)

3.7

この監督にしてはベタな物語。切ないけど大げさで笑える。得体の知れないエネルギーを感じるディスコのシーンが最高。時々なぜか「ドライブマイカー」を思い出した。お約束のチャオタオの娘演技は名人芸級で、大いに>>続きを読む

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

4.2

2020年に91歳で亡くなった映画音楽の巨匠の半生を追うドキュメンタリー。監督は「ニューシネマパラダイス」「海の上のピアニスト」で彼に仕事を依頼したジュゼッペトルナトーレ。少し長かったが本人のインタビ>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

4.2

心の障害と身体の障害。お互いの不自由さを補い合いながら愛を育もうとする男女の物語。面白かった。解説を読んで驚いたのは、エンドレ役の男性が俳優ではなく演技が初めての素人だという事実だ。「夢で会いましょう>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

3.8

生と死の境界が曖昧になっていくような感覚にめまいを覚えた。われわれが聴く「音」とは空気の振動であり、それを知覚できるのはわれわれが3次元世界に存在する証(の一つ)でもある。ジェシカは夜更けに聴いた不思>>続きを読む

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.6

作家のエドガーアランポーは実際に陸軍士官学校に在籍した経歴を持っていて、写真を見ると彼を演じた役者に少し似ている。そんな若きポーとクリスチャンベイル演じる元刑事ランダーが手を組んで学校内で起こる不可解>>続きを読む

ペルシャン・レッスン 戦場の教室(2020年製作の映画)

4.0

監督は「砂と霧の家」のヴァディムパールマン。面白かった。短編小説にヒントを得て書かれた脚本で、このとおりの実話ではなさそうだが、実際に機転や鋭い思考で人々が助かったという話は数多くあるという。ナチスの>>続きを読む

家族の庭(2010年製作の映画)

4.2

2010年マイクリー監督作品。面白かった。まさにバツイチこじらせ女メアリーを演じたレスリーマンヴィルの独壇場。マイクリー作品の常連だがエグいくらい演技が上手く、居心地の悪さに居た堪れなくなる。話が途切>>続きを読む

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