肉袋

聖地には蜘蛛が巣を張るの肉袋のレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.9
もうちょっと舞台になる聖地とか勉強しておけばよかった!

観てるときは歪んだ狂信者と、それに相乗りしようとするミソジニー社会というように感じたけど、鑑賞後に反芻していて因果が逆だと思い至った。
サイードが息子にボールを当てられてカッと衝動的に怒りだしたり、大柄の娼婦にたじたじになって情けない姿を見せたりするようなものすごく普通の男だという描写が徹底しているから、
悪魔みたいなカリスマを持った狂信的な男の話ではなくて、ミソジニー社会が一人の男を歪ませた話というのが本質なんだろう。
サイードに下る審判は因果応報というよりホモソーシャルの中で担がれた男が最後には使い捨てられて、全ての責任を負わされる様でしかない。

日本でも女性、セックスワーカー、トランスジェンダーを筆頭にクィアな人々、外国人に対する差別的な言論はSNSに腐るほどある。犯罪者とその息子までもを後継者として無責任に担ぎ上げながら彼らを使い捨て責任を取らないというスタンスは別段イスラーム社会だから起きる話ではない。狂信者にも、無責任な神輿を担ぐ人間にもなりうる土壌が日本にも十分にある。
加害者にならないための教養、身につけていきたい…
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