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ゴールデンカムイのIkTongRyoのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
3.9
圧倒的な完成度を誇る原作をベースに、作者がしっかりと脚本を監修し、クオリティコントロールをした結果、最高の漫画原作の実写化になった。原作へのリスペクトがあれば実写化は成功する!

ゴールデンカムイ原作原理主義者であり、漫画の実写化大嫌いマンであり、実写邦画を映画館で観ることなんて滅多にない僕ですが、今作は割と頑張っていて良作だと思いました。

もちろん劇中音楽のチープさやスローモーションの多用、度重なるテロップによる補足など、残念な箇所はありつつも、それをカバーできるほどの面白さ、アクション、原作へのリスペクトを感じられた。冒頭の「旅順攻囲戦」なんて映画『1917』の塹壕戦を彷彿とさせるほど戦争アクションがしっかりとしており、日本もまだああいった迫力のある映像が撮れるんだなと感心。

まさか二十八糎榴弾砲まで描くとは。

民具や小道具は、出来る限り本物へのこだわりを大切にして欲しいという作者の想いを汲み取っている。アイヌのものは映画の小道具ではなくアイヌ工芸家のご協力のもとで本物を用意。

杉元が所持している三十年式歩兵銃(三八ではない)はモデルガンも市販されていないほど世間ではマイナーな銃だが、作者もうなるほどかなりクオリティが高いとのこと。原作の取材で使った『坂の上の雲』で使われた三十年式よりも、ディティールが正確らしい。

そしてキャラクターの再現度はピカイチ!
白石サイコー、二階堂きもちわるい、鶴見中尉は変態、鶴見中尉より背が高い月島軍曹マジ月島、アシリパさんは慣れると可愛い、山崎賢人は頑張ってた。

何よりもアイヌ文化をこうしてエンタメとして観られるとても貴重な機会。
コタンのシーンはマイノリティたちの文化継承などを意識してしまい、涙が溢れ出た。
エゾオオカミを劇場で観られる作品なんてゴールデンカムイぐらいやぞ!

前半はリアリティ寄りな映画のような演出だが、演技や画作りが追いついていないのでハマりきれなかった。アイヌたち原住民の描き方やリアリティはどうしても『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を意識してしまうし、ヒグマとの戦闘は『レヴェナント』と比較してしまう。そういったディカプリオのハリウッド大作には及ばない・・・けど本作の印象がガラリと変わるのが白石と第七師団の登場からだ。ものすごく”マンガ”っぽい雰囲気になり、原作特有のシリアスの中で生まれるユーモアに支配され、アシリパや杉元もだんだんふざけだす。

面白い、笑える、クセになる。

だからこそ、後半部分に圧倒される。
小樽の一連のシーンは映画セットの綿密さも合わさって、素晴らしい。

とても静かで真っ白な北海道の風景は心を奪われるほど美しいので、観終わった後は北海道に行きたくてたまらなくなる。

マンガ原作の実写邦画大嫌いマンの俺が!
感動するなんて悔しい!🥹
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