地底獣国

ブラインドマン/タイタニックを見たくなかった盲目の男の地底獣国のレビュー・感想・評価

3.7
遊星からの物体X
ミザリー
カッコーの巣の上で
エイリアン
ニューヨーク1997
ハロウィン
タイタニック
名犬ラッシー
クジョー
怪人スワンプシング
ファーゴ
(劇中言及された映画で自分が分かったのはここまで。「ロン」って名前の犬が出てくる映画って何?)


隣町への小旅行は自由と恐怖と苦難に満ちた冒険。善も悪もあることを心得よ。

多発性硬化症で視力を失い、胸部から下も麻痺して孤独な日々を送るヤーッコの心の拠り所は、難病(たぶん免疫疾患)を抱える女性シルパとの電話での会話。
未だ会ったことのない二人は互いを励まし、惹かれ合っていくがそんなある日、望んでいた治療法を受けられないと知って激しく動揺するシルパの声を聞いたヤーッコは彼女に会うため付き添いなしの一人旅を決意する…というお話。

劇中、ヤーッコの世界を擬似的に体験する場面(真っ暗な画面に音だけが響き渡る)、時間にして数十秒ぐらいだったかと思うんだが、障碍を持たぬ身からするとこれだけで半端なく心許ない気分にさせられる。さすがに全編それってわけにも行かんので主に被写界深度を非常に浅くとった画面でヤーッコの孤独感を強調し、彼の表情や一挙手一投足に観てるこちらがハラハラする様に仕向けていたのが印象深かった。

前半でそういう状態をきっちり見せているからこそ介護士付けずにシルパの家まで行くとか無謀とも言える行為に彼を駆り立てるものにも納得できて話に乗れたんだが、中盤に訪れる危機をいかに乗り切るかというところは説得力を欠いていて若干醒めた。

とはいえ最後の粋な演出(具体的なことはコメント欄で)には感心したんでスコアはこれぐらい。

ここから長い余談:先にヤーッコの決断を無謀と書いたが、結局のところそれを無謀たらしめているもののひとつは制度の問題、つまり介助に割けるマンパワー不足であり、もう一つは我々周囲の人間が十分注意を払わないことだと思われる。

ヤーッコが電車の中で携帯を盗られる件にしても、周囲にいた乗客には彼が障碍を持っていて被害に遭うリスクが高いのが分かるはずで、そういう目で見張っていれば事態の悪化を防げたかもしれないのに、彼のような人達をブラインドマンならぬインビジブルマンのように見過ごしているという点は自戒も込めて書き残しておきたい。
地底獣国

地底獣国