ヒロ

喜劇 特出しヒモ天国のヒロのレビュー・感想・評価

喜劇 特出しヒモ天国(1975年製作の映画)
5.0
女が曝け出す性で生を受ける男、死するものがあれば生まれてくるものもいる、喜ぶやつを見て怒る人もいれば、哀しむ者を見て楽しむ客もいる、+を生むのは決まって−だし、凹めば凸って、飯食って穴に竿挿して寝る、人の営みというものはこうして繰り返されると。アル中、聾唖者、性転換、子供に老人、デブにブス、底辺から抜け出せない負け組が自分で自分の身体を売り銭を儲けて何が悪い。無気力で不摂生な細すぎる身体をくねらせ踊り狂う芹明香には『㊙︎色情めす市場』が色濃くだぶるし、雪が降りしきるなかその豊満な身体でヒモ男山城新伍を抱き寄せる池玲子の母性は止まらない、ヤニで茶色く黄ばんだ下歯を突き出しこの世の真理を説き伏せる坊主の殿山泰司はこれまでにない最高の脇役。今話題の『ボヘミアン・ラプソディ』の 「We Are The Champions」を軽く凌駕する、護送車の柵を握り締め美しき京都の街並みを睨みつけながらの「黒の舟歌」の大合唱から得られるカタルシスは前者のおおよそ15倍。聾唖の夫婦から生を受けた赤子が渾身の力で振り絞った産声が響くとき世界は逆転する。哀しみを伴わない喜劇はただの茶番である。
今作は紛れも無い本物。

《女たちの街
「色」と「花」に彩られた文芸映画の世界》
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