柏エシディシ

シニアイヤーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

シニアイヤー(2022年製作の映画)
2.0
「ロマンティックじゃない?」でロマコメの脱構築に挑んだレベル・ウィルソンの次の標的は学園コメディ。
果たしてその結果は!?
人気者のチアリーダーだったステファニー(レベルウィルソンの若き頃はアンガーリー・ライスちゃん!絶妙)は晴れ舞台のプロム直前に不慮(?)の事故で昏睡状態に。目覚めると20年の歳月が経ってしまっていた……失った青春時代を取り戻すためにアラフォー高校生としてカムバックするのだが…

試みは面白いのだけれど、ちょっと上手くいっていない。
確かに学園コメディって、当然若者たちを描いている以上、その時代の最先端のカルチャーや価値観を描いているもの。
ゆえに過去の作品を観ると「あちゃあ」と思うところもあって、本作は「浦島太郎」設定でそこを批判していくのが先ずはポイント。
さらに翻って、今時分のコメディ映画延いてはエンタメ全体のポリティカルコレクトネスやSNS社会を面白可笑しく茶化していくチャレンジも興味深く、いくつか面白いネタもある。

ただそこに共感を持っていくための説得力に乏しく、映画としての魅力も損ねてしまっているかなぁ。
優れた学園コメディに共通するのは、突出した肯定感と、現実の学校生活(もう社会全体と言っても良い)ではあり得ない、どんな個性でも受け入れるポジティビティだと思うのだが、おちょくりつつもそこの本質に立ち返る作劇にはなりきれていない。
「意地の悪さ」という毒の量を間違えてしまっているというか。
90年代学園コメディを象徴する"あの人"の登場と顛末は、言いたい事は分からないでもないけど、ちょっと愛が足りやしませんか…
エキセントリックなヒロインはこの手の作品では定番だし、レベルウィルソンのウザさも普段は嫌いじゃないのだけれど、今回はギリギリ共感を寄せにくいキャラ造型。セスやマーサとの関係性とかフツーにヒドい奴じゃん、としか。
2つの世代のギャップを描きつつ、それでもどちらも結果肯定し、共通する美点を再発見する様な物語にもっと出来た筈。
視点は面白いだけに全体的に勿体ない印象がしてしまった。

まぁ"世代"なので諸々の90年代オマージュはもちろん楽しく観れたことは白状しておく。
逆に今の若い世代は本作を観てどう思うのか興味がある。
柏エシディシ

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