フクイヒロシ

帰れない山のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
4.5
■原作は世界的ベストセラー『帰れない山』(原題:「LE OTTO MONTAGNE」八つの山)
本作の原作は、イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」、フランス「メディシス賞」外国小説部門、 「英国PEN翻訳小説賞」などを受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー小説「帰れない山」。
​とのこと。

2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念する。

ともあるので、原作者と主人公ピエトロはかなり重なってるんでしょうね。

■小説が原作なだけあって物語が強い。
映像に頼った雰囲気映画ではなくちゃんとキャラクターがあるし
映画化を考えてなかったからだと思うんですけど、結構いろんな国に行くので、、ロケ大変そうでした。。

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映画予告編の四コマ漫画

■四コマ映画『帰れない山』

https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2934

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■とはいえやはり山の映像すご

アルプス山脈の2番目に高い、イタリア北部モンテ・ローザの映像がすごい。
夏は気持ちよさそうな風と美しい緑なんですけど
冬は軽地獄ですね。雪地獄。
「やっぱ自然っていいよね」なんて軽々しく言えない。

途中、都会からピクニック気分で若者数人が来るんですけど彼らの異質っぷりが際立つ。
自然からも、自然と同化している主人公のひとりブルーノからも彼らは拒絶されるそりゃそうだ。



■ブルーノとピエトロの友情の物語

話の主題は男二人の友情の物語。
監督が「この友情をラブストーリーのように撮った」と言っているのが合点がいく。

その「愛してる」は友情由来のもの?それとも??
っていうシーンの連続。
どこへ行くの?ふたりはどこへ向かっているの?全然いいんだけど、行っちゃうの?
ってハラハラドキドキしながら観ました。


■都会っ子ピエトロ、自然っ子ブルーノ、それぞれの父

この映画には、ピエトロとブルーノと、存在感の大きいピエトロの父、そして不在のブルーノの父の4人の比重が大きいです。

こう考えると「強い父に押し潰される息子ふたり」の物語な感じがします。
「父との和解」?

父の押し付けてくるものや期待からなんとか逃れようとしたり、飲み込まれたりして大人になって
父の死後、父という存在を受け入れる、受け流す儀式をしたんだろうね。

それを一人ではなく、ふたりですることができたんだ、ピエトロとブルーノは。



■男女の差

性差について原作者や監督がどれほど自覚的に描いているのかわからないけど、、めちゃくちゃ描かれている。
とにかく「母・妻」と「父・夫」の差異が大きい。大きい。大きい。

あ、原作者パオロ・コニェッティ、僕と同い年だ。1978年生まれ。
39歳の時に小説『帰れない山』を発表。
2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念してるとのことなので、都会が疲れちゃう人なんですかね。特に人間関係。



■自然は逃げ場ではない

ピエトロとブルーノがある約束を果たすために「家」を作りまして、そこが二人の桃源郷のようになりまして、

そこでの暮らしはロマンチックだしロバは可愛くてほのぼするんだけど
そこに「現実」や「社会」がじわじわと降り積もってくる。

いつまでもビオトープみたいに生きていきたいけどね。。

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四コマ映画『帰れない山』https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2934


ラストネタバレはコメント欄に!!