はんそく負け

帰れない山のはんそく負けのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
3.7
「山を撮る」って何もしないとドキュメンタリータッチになってしまうのだが、どうやらそれを回避しようとしている、というのがキモっぽい。
たとえば音楽。山を登るにせよ家を建てるにせよ、要所要所でカントリー調のBGMが流れてきてセンチに仕向けている、と同時に劇映画であることを知らしめている。これどうやって撮ってるの?と思わされる、山の上での横移動のカメラが頻出するのも然り。カメラの存在を強調することもまた劇映画であることの主張に違いない。
どうしてそこまでドキュメンタリーへの接近を忌避するのか。カウリスマキは「劇映画作家は皆んなドキュメンタリー作家に憧れを持っている」的なことをどっかで言ってたのだが、まぁドキュメンタリーがそれほど神聖なものかは分からんが、一応それが正しいとして、じゃあドキュメンタリーに近づいてるのに回避するのってかなり禁欲的なことですよね。そう考えると画角がスタンダードであることも、「禁欲」あるいはそれに近しいことがテーマであることの証左と捉えられるのではないか。無理矢理かもしれないが僕の中ではこういう結論に落ち着いた。