「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤ監督の作品とあって、相変わらずあらすじも確認しないまま観てしまい、序盤の展開に戸惑いました。
“Whiplash”のカッコよさが際立つオープニングタイトルがお洒落で、映像も全編にわたってスタイリッシュです。とてもアジア映画を観ている感覚にはなりません。でもなぜか、ウードの元カノ訪問記のくだりが妙に雑な演出です。元カノのキャラクターもちゃんと設定されているので、2人の過去や心情を丁寧に描けばいいし、まったく尺を間違っていてもったいない…。
しかし、前半のウードの未練たらしいロードムービーのパートはすべてダミーで、別な1人の女性をめぐるボスとウードの人間模様が物語の本筋でした。その起点と核心を描く映像のバックには、The Rolling Stonesの“Time Is on My Side”(超名曲)が使用されます。この楽曲の個人的な記憶と重なってしまい、残念ながら、ここがハイライトになりました。
後半はボスを中心としたニューヨークを舞台とする物語で、3人の誰かに感情移入できるものではありませんが、前半の伏線やフラッシュバックを多用した映像など、時間軸をうまく操作しながらの演出に惹かれました。2人の友情が深まる過程がわかりにくかったので、もう1回観れば印象が変化するかもしれません。
ちなみに、ウードの元カノである女優のヌーナーが2丁拳銃をぶっ放して背後に鳩が舞うシーンは、“エッ?”ってなりましたが、“これがやりたかったんだろうな”と思うしかなく、それでいてクスっとなる粋な演出でした。