HAYATO

ファンタスティック・プラネットのHAYATOのレビュー・感想・評価

3.6
2024年153本目
カンヌ国際映画祭特別賞を受賞したSFアニメ
真っ青な肌に赤い目をした巨大なドラーグ族と、彼らから虫けらのように虐げられているオム族が住む惑星。ある日、孤児となったオム族の赤ん坊がドラーグ族の娘に拾われ、テールと名付けて育てられる。やがて、知恵を身に着けたテールは脱走。ドラーグ族に隠れて暮らすオム族の集落にたどり着き、彼らにも英知を授ける。だが、その頃、ドラーグ族による「オム族絶滅作戦」が開始されようとしていた……。
フランスのSF作家・ステファン・ウルの小説『オム族がいっぱい』をもとに、画家・ローラン・トポールが4年の歳月をかけて描いた原画を、ルネ・ラルー監督が切り絵アニメーションという手法で完成させた。
何よりも強烈なビジュアルが印象的な本作。何とも言えない奇妙で不気味なキャラクターデザインとアーティスティックなタッチは、日本のアニメではなかなか見ることはないが、奇妙な巨大生物の描写などは宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に影響を与えたと指摘されているそうだ。
巨大なドラーグ族と人間そっくりのオム族の闘争及びその主従・支配関係は、現実世界に通じるテーマ性とそれに対する批判を感じ取ることができる。冒頭から人間に似たオム族が巨大なドラーグ族に虐げられている様子が描かれ、ドラーグ族がオム族をいたぶったり殺したりしても何の罪悪感も抱いていないところは甚だ恐ろしい。
オム族が知性を獲得し始めると、ドラーグ族が脅威を感じ、虐殺や戦争を仕掛ける展開は、差別や偏見に基づいた暴力の恐ろしさを訴えかけてくるものだった。
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