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ショーシャンクの空に 4Kデジタルリマスター版のTのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

どんな状況でも希望を絶やさずに生き抜け、というのがメッセージであることは確か。ただ、自分が気に入ったのは、アンディが絶望の淵に立たされる度に希望を思い出させたものが常に教養や心の豊かさだったこと。

壁に穴を開けられたのも、同じ空間を共有した人へのシンパシーから名前を彫ろうとして、壁の材質に気付いたから。岩石の性質を知っていたのは趣味だった。そのとき持っていたロックハンマーは、チェスのコマを掘るために取り寄せたもので、壁に穴を開けるつもりのものではなかった(レッドと600年かかると話していたのは恐らく本当に冗談、最初から計画していたならポスターをハンマーと同時に頼むはず)。穴を掘り続けたのも、脱出への強い意志があったのではなく、いつか役に立つかもしれないという程度で、ほとんど趣味だった。

真犯人に気付いたのも、図書館を充実させ、その結果教育ができるようになり、その中の1人に親しくなったトミーがいたから。囚人たちにもっと本を読ませようとしたのも、教育熱心だったのも、ただアンディがそうしたかったからで、当然真犯人を見つけるためではない。

この映画では、常に教養が"図らずも"身を助ける結果になっている。打算的な努力でなく、教養それ自身を無目的に大切したことに対して唐突に救いが与えられる。これがこの映画の1番好きなポイント。

所長は「希望はこの中に」と聖書を渡し、アンディは「確かに(物理的に)中にあった」と皮肉で返すが、実際にロックハンマーを隠し通せたのは、所長との会話の際に聖書を"開くまでもなく"暗誦してみせるほどの教養を見せつけたからだった。所長が手渡したのは聖書という世界共通の教養であったことを思えば、アンディは皮肉でなく本当に言葉通りに所長の言葉を受け取っていたとも思える。
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