このレビューはネタバレを含みます
・時間をかけて描かれ、まるで本を読んでいるかのような丁寧な描写。
たとえばトンネルを見つけるとき。石の駒を投げると落ちる音。もう一度。ポスターに穴。恐る恐る指を入れると…。もう穴があることはわかっていてもドキドキする。
・小道具もおしゃれ。時代の変遷を表す女優たちのポスター、『救済』の十字ハンマーは聖書の中に。
・ラストはやはりこうでないと。青い海、白い砂、抱き合う2人。
【キャラクター】
・ナレーションが詩的で美しすぎるレッド。刑務所での風を肩で切り、モノや賭けを仕切る態度と、外でのおどおどした態度のコントラストがリアル。仮釈放審査では、初めの方はボタンを上まで締め、真正面を見て取り繕い「隠そう」という雰囲気。最後にはリラックスし「ありのままを見てもらおう」という感じ。ちなみに物の調達に接触するのは黒人。ある種黒人のようなネットワークは狭いコミュニティでモノを言うのか。
・大きな図体に理知的な瞳のアンディ。鍵を締め切りレコードを流す挑戦的な目は色気がありドキッとする。でかいのに「やられる」側なのわからん。
・可愛らしくかわいそうなトミー。やんちゃで愛らしい笑顔だった。話は本当だったのだろうか。そんなことのために殺されてかわいそうに。
・壁に刻まれた生きた証。穏やかで何の罪かわからないけれど長年刑務所にいたブルックス。釈放が絶望というのは初めての感覚。懲役は『刑務所外で生きられないようにする罰』?切なくて悲しい。
・初見時、『脱獄』の映画だと思ってたので脱獄自体はかなりあっさりした印象。グリーンマイルと比べると見せ場もやや小ぶり。その分ビールのような日常シーンが心に残る。ポスターのアングルもないし。脱獄物はそこに至る過程と脱獄後にどうするのが大事。それから、『Disposal』も…
・それでも『希望を捨てるな』みたいな安易なメッセージを受け取った気もしない。ひとはその場所で生きていく。辛い世の中の不条理に心がぎゅっとなるシーンもあるのになぜか落ち着くような懐かしいような不思議な映画。