毎度そうですが、今泉力哉監督の作品は鑑賞後の帰り道に人と会いたくなって仕方ない。会話だけでここまで引き込まれるんだ。
今泉監督の作品沢山見てきたけど群を抜いて好きでした。
なんだか沢山の贈り物を貰った気分。
何度でもみたい。
148分あるらしいけど体感100分くらい。
それくらい満足感ある。
そして相変わらず、何でもなさそうなカットに意味を持たせるのがとても上手。無音や絶妙な間が絵に持たせる情報量が観ていて楽しい。
共感できるか出来ないかで大きく左右されると思うけど私にとってはこの上ない良作。
しばらく噛み締めることになりそう
⚠️以下ネタバレ
「欠落した感情に気づいて、そのことにショックをうけること。」
これは決して恋愛じゃなくても、例えば遠くない肉親、おばあちゃんの葬式で、周りのみんなは泣いているのに自分だけ泣けない。涙の出ない自分にショックをうける。感情に素直に、人らしく振る舞えているみんなの事が羨ましく感じる。みたいなことと同じ。
怒ったり、声を荒らげたり、感情をむき出しにする人に、少しだけ嫉妬してしまう。
市川さんも失恋した久保さんや浮気に気づいた有坂ゆきのさん怒りや悲しみを顕にしてる姿に羨ましいと感じたでしょう。
では僕や市川さんは浮気で怒れないのか、葬式で泣けないのか。
ここから先は僕自身の自己分析からたどり着いた結論なので本編の市川さんがそうとは限りません。
僕は、考えることが好きです。
答えのないものとされていることは特に。
しかしそんなものでも、三日三晩考えれば大抵のことは答えが出せます。
「生きる」とは?
「愛」とは?
「幸せ」とは?
「浮気されたら?」
「おばあちゃんが死んでしまったら?」
常日頃からそのような事を考えて、答えを事前に出しています。
だから、いざその事象が起きた時に「悩む」とか「悲しむ」みたいな本来経由すべきパートを経由せずに、事前に用意した結論を出すだけだから、皆のように正しく傷つけない。
考えうる範疇の出来事では感情が動かなくなってしまっている。
だから、確かに僕らからすれば「悩む」行為は贅沢だと感じます。その中で泣いたり怒ったりできる人が羨ましい。
作中の彼がどんな理屈でショックを受けなかったのかは分からないですけど、少なくともこの映画で僕は、この理屈を自分の中に見つけました。