shiro

52ヘルツのクジラたちのshiroのネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

※原作未読
「悲劇を神格化し、自己憐憫の糧にする」
そんな映画。本当に合わなかった。
嫌いまである。

話の軸は基本的に激重ディズニー/シンデレラストーリー。
不遇な環境に居た少女が優しい王子様に助けてもらい恋をする。しかしその恋は実らず、別の王子様との恋愛を経験する中で、優しい王子様の見えていなかった本当の愛を理解していく。

冒頭の雰囲気はめちゃくちゃ好きでした。
(専務登場から急激に安っぽくなる。)

ただ、その中に加味されていく
「介護」「DV」「ネグレクト」
「ジェンダー」「福祉」などの社会問題。

畳み掛けるように不幸が襲ってくるのにどれも表現が中途半端。「丁寧に取り扱うべき」問題が、「同情のための機能」として消費されているように感じてしまうほどに、広く浅い。
見事にお涙頂戴の道具に成り下がっている。

これは本当に好みの話になってしまいますが、そもそも「52ヘルツのクジラ」という、「孤独」のメタファーとそこから生まれるメッセージを、いちいち大きな問題に紐づける必要は“無い”。

平凡で、当たり前で、普通に暮らしてる人達にも、他人には聞こえない心の叫びがある。それでも一人一人の問題を社会問題に繋げて、できるだけ最悪な状況に、考えうる限り最悪な親、彼氏、が主人公を「可哀想」にするのは、そこに没入感が生まれ、受け手に簡単に伝わるから。

何も考えずに「悲しい」とか「辛い」とか感じられる、「機能」の部分しか作用してない。

だからこそやはり、様々な「不幸」「社会問題」を取り上げるのだとしたら、そこにかける時間も、深みも、考えも足りないと感じる。

メッセージはすごく素敵なのに表現が広く浅いだけで消費にしか見えない。

以下愚痴。
ぶっちゃけ、「救われるためには悲劇のヒロインにならなければならない。」そんな間違えた思想を植え付けかねない良くない映画だと思ってる。
救いは至る所にある。
そこに気付けず、悲劇に憧れてばかりで前に進めないならお前が悪い。以上。
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