確固たる今泉力哉作品。
なんでか長回しが心地よく感じてしまう。
演者に委ねるような
間の取り方やセリフの柔軟さ。
観客の取り方によって
いくらでも余白が生まれ
それをそれぞれが埋めるように解釈していく。
残るのは、
人間模様を目の当たりにしたという
わずかな疲労感と若干の鬱陶しさ。
そして対照的とも言える、
窓辺に差し込む仄かな陽光の暖かみだったりする。
こうした印象には
稲垣吾郎という役者のそれにも
深く類似する所であり、
今泉作品常連の顔ぶれとの親和性に
驚きを禁じ得ない。
主人公の婚姻関係を中心に描かれる、
好きになるということの複雑さが
いろんな登場人物の角度から描かれる。
みんな、好きの尺度や濃度は違うのであって
そんな当たり前を繊細に描き
如何様にも解釈の幅を広げさせてくれる作品だ。
何年後かに見ると
また違って見えてくるだろうなと思うし
今の想い人のことを思い出す作品になるのだろうなと、少し儚くなった。
