サンヨンイチ

ミッシングのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.2
石原さとみを象る健気さやあざとさを
冷笑する一部の人間臭さを最大化し、
力むほど空回りする様を
外野、というより観客席にすらいない
スタジアムの外にいる輩が攻撃する恐ろしい映画。

石原さとみにせよ、
青木崇高にせよ、
小野花梨にせよ、
キャストの当てはめが意地悪な方向に上手すぎる。

SNSの悪口を見過ごせず上から下へとスクロールしてしまう主人公。
その怒りをある人物にぶつけてしまうが
その方法が、残酷なことに
SNSの書き込みを投影したような絵面になってしまう。

吉田恵輔監督が突きつける不条理は
極めて序盤で、バッドエンドを確定させてしまうが
その“最悪”とどう折り合いをつけるのか
ラストに暖色の光で照らしてくれる。

青木崇高演じる父親役が
ふとした瞬間に抑えていた感情を決壊させる
2つのシーンが印象的で、
その2つのシーンも
それぞれで抱く感動が異なるのが上手い。
ちゃんと映画として話が進んでいる。

小さい子供を持つ世代の鑑賞は
お勧めできず、見るにしても
極めて健康な状態で挑んでほしい問題作。
しかし、世の中のどんな闇に放り込まれたとしても、
必死に手を伸ばし続けることで
思いがけない小さな手が掴んでくれることもあると、
少しだけその奇跡に期待を寄せられる
暖かなラストを是非見てほしい。