『ビースト』
原題 Beast.
映倫区分 G.
製作年 2022年。上映時間 94分。
アフリカの広大なサバンナを舞台に、凶暴なライオンに襲われた一家の父親が娘を守るために戦う姿を描いたサバイバルアクション。
『ワイルド・スピード スーパーコンボ』『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』など、数々の大作で活躍するイドリス・エルバが主演を務めた。
主人公ネイトをエルバが演じ、マーティン役でシャルト・コプリーが共演。
メガホンをとったのはアイスランド出身のバルタザール・コルマウクル。
妻を亡くして間もない医師のネイト・ダニエルズは、ふたりの娘たちを連れ、妻と出会った思い出の地である南アフリカへ長期旅行へ出かける。
現地で狩猟禁止保護区を管理する旧友の生物学者マーティンと再会し、広大なサバンナに出かけたネイトたちだったが、そこには密猟者の魔の手から生き延び、人間に憎悪を抱くようになった凶暴なライオンが潜んでいた。
ライオンに遭遇したネイトは、愛する娘たちを守るために牙をむく野獣に立ち向かっていく。
今作品は個人的には楽しめたし、よくできている作品でした。
作中、アフリカの環境の中で登場人物を追い回すワンショットのテイクが入るが、いくつか巧妙な編集が施されているのは、観てる側が登場人物の立場に置け、追体験を豊かにするいい方法やと思います。
ライオンの特殊効果は時に説得力があり、そのデザインは確かに威圧的でしたし効果も良く、動物の行動も十分に信じられ、大げさになりすぎることもなかった。
ライオンの肩の荷が下りたり、人間の味を覚えたりしたら、このようなことが起こるのだろうと想像することができます。
実際、歴史上、1頭のライオンが10人以上の人間をあの世に連れ去ったことが何度もあるんやし、まったく信じられないことではない。
多くの映画作品で銃に触ったこともないような俳優さんたちが、まったく非現実的なことをやっているのに対して、今作品ではかなり現実的に銃が使われてたし好感がもてた。
今作品の登場人物はセレブでもないし、兵士でもないかなり限られた武器しか使っていない。
密猟者たちは、100年前のボルトアクション式303リー・エンフィールドからSKS(ソ連で開発された半自動小銃)やAKライフル、古き良き7.62x39弾まで、リアルな銃のごった煮を所持していた。
アフリカで密猟者になるような経済的に苦しい人たちが手に入れられる武器の種類としては、現実的やった。
密猟者を防ごうとするレンジャーも、毎回大枚はたいているわけでじゃないし。
ジャンルや予算を考えると演技は素晴らしいし、舞台も美しかった。
また、カメラワークもいいし、アクションも緊張感も、いったん盛り上がると止まらないし、無駄がない。
キャラ設定も、クリーチャー映画としては控えめでいい感じです。
イドリスはいつも通りいい仕事をしています。
彼が何をするにしても、私はいつも楽しんでいます。
この映画では、母親を亡くして傷ついた2人のティーンエイジャーの娘を守るために、あらゆる手段を講じる絶望的な父親を見事に演じている。世間では、彼の選択はすべてバカバカしいと云われるやろけど。
また、イドリスは、娘たちとの間にあるよそよそしく不安定な関係を修復しようとする父親をきちんと演じているし、シャールト・コプリー演じる彼の旧友は、見ていて十分に楽しめる存在感を放ってました。
実際のアフリカで、どのトラックにもAK47と弾薬の入ったマガジンが数本積んであって、全速力で向かってくる地球上で最も運動能力が高く、素早く、残忍で、優雅な動物を、毎回完璧なヘッドショットで簡単に撃ち抜けるように平和な日本では思える。
実際は、高度な訓練を受けていようがいまいが、ほとんどの人はフルチャージの大型肉食動物を短距離で取り逃がすのが関の山。
最新のセミオートで何発も撃っても、ボルトアクションや70年前の錆びたAKはともかく、弾薬が惜しいから練習しない。
現実には大体こんな感じじゃないかな。
大型ネコ科動物がこんな風に大暴れしたこともありますから、非現実的とは云いきれない。
また、iPhoneの最新版を取り出してヘリを呼び、スターバックスのフレッシュラテ(大豆がたっぷり)とヴィーガン・オーガニック・グルテンフリー氷河水をリサイクルされた生分解性容器に入れて、すぐさま彼らをすくい上げることができるとも思えない。
よくできたクリーチャー機能で楽しみたいなら、この映画は最適かな。
ただ、少し残念なんは、上映時間。
この長さでは、家族のドラマが思うように打てず、3幕が急ぎ足になってしまい、ほとんど拍子抜けした部分も否めないし、映画のかなりの部分を1つの場所に閉じ込めるのは、少しうんざりするものがあった。
結局のところ、『ビースト』は良いコンセプトでありながら、そこまで評価が上がらんのはその点の要因もあるんかな。
とは云え個人的にはたのしめたし、面白い作品でした。