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ビーバップのおっさんのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ビーバップのおっさん(2022年製作の映画)
3.0
【あの夏のミリンダの味】

みなさんは「ミリンダ」っていうジュースをご存じですか?
僕が小学生~中学生くらいの頃はどこの店でも売ってるようなありふれたジュースの一つだったんですが、最近は見かけなくなっちゃったから、もしかしたら販売終了になったのかな?

別にずば抜けて美味いとかそういうものでもないんですが、何ていうか「あぁミリンダだわ~」っていう味なんですよね(笑)
で、当時はまだペットボトルというものが出回る前のなので、買うとすれば「瓶」しかなかったんですね。
当時まだ子供だった僕たちはそれが何となくカッコよく感じていて、買い食いするときなんかはちょっと背伸びして瓶のミリンダを買って「グビっと大人飲み」でカッコつけたりして(笑)
まぁ「背伸び」っていうほどハードルが高いわけでもないけど(^-^;

僕が「ビーバップ~」とか「湘爆」にハマったのもちょうどこの頃だったような気がする。
記憶の中でも「ヤンマガとチェリオ」が中学生の僕のマストアイテムだった時代がある。

だからなのか、これらの作品だけじゃなく、これらに出ていたキャストの方の名前を聞くたびに、「懐かしさ」とか「自分も年取ったな~」っていう実感なんかと一緒に、この「ミリンダの味」も蘇ってくるんですよね~。

もしかしたら、昔の「ビーバップハイスクール」や「湘南爆走族」の実写映画、更にはTVでやっていた「大映ドラマ」なんかも観たことがないっていう方がこの作品を観たら「なんじゃこりゃ?!」って途中で観るのを止めちゃうんじゃないだろうか(;^_^A
物語自体はユルユルだし、役者の演技だって昔風に言えば「大根」だし。

・・・でもね、そうじゃないのよ。
この作品の「良さ」や作品の「持つ意味」って、そこじゃないのよ(熱)。

物語は、小さな町工場の社長である主人公テルが、取引先の理不尽がきっかけでトラブルとなり廃業に追い込まれてしまい、仕舞には妻や娘も出ていってしまう。
一人で何とか再起を誓って日雇い労働をするも全然明日への光も見えないまま疲れ果てていると、そこに現れたのは、高校時代にバチバチにやり合った愛徳のヒロシだった・・・・っていうお話。

もうね、「ビーバップと言えばテル」「テルと言えばビーバップ」っていうくらいに、その強烈すぎるキャラクターはシリーズ全体を通しても1,2を争う程の人気(?)キャラだったんだけど、その彼を主人公とした「あの頃映画」的な要素も結構強いので、先にも触れたような映画やドラマを観ていないと「なんだか演技のユルいおっさんばっかだな・・・」っていう悲しい評価にもなってしまうかも(^-^;

主人公のテルの苗字がオリジナルと同じく「藤本」である時点で、(あ、そのままいくテイストなのね)って気が付くんだけど、そこからはもう次から次へと「懐かし設定」をぶち込んでくる。

ご存じヒロシ(清水宏次朗)は、テルと再会した瞬間から「愛徳のヒロシ」ってなってるし、テルの工場の先代はテルのお父さんだったわけだけど、そのお父さんの遺影(絵)は、ビーバップでもテル以上に狂暴な父を演じた成田三樹夫だし、たまたま助けたおにぎり屋の主人は「腐ったミカンの方程式」で有名な加藤(直江喜一)で、彼の商店街のケツ持ちをしていた昔気質のヤクザ「湘南一家」の親分は、かつて湘南爆走族で特攻隊長としてならした「マル」こと丸川(村沢寿彦)、その奥さんは「鏡が割れると途端に別人格に変わってしまう」事で有名な大沼由美(杉浦幸)。さらにその一家の舎弟分には「ごくせん」に出ていたクマ(脇知弘)。
町を仕切る悪徳刑事には、ビーバップでヒロシたちのライバルであり悪友でもあった「北高のシンゴ」こと小沢仁志の実弟である小沢和義を配し、これまたヒロシも「あれ?シンゴ?シンゴだろ?」と見間違えるという憎い演出。

以前、「クローズ」と「ハイローシリーズ」がクロスオーバーして話題となりましたが、今作で言えばもうあの頃のヤンキー映画のマルチバース状態ですわ。
あとはスクールウォーズから大木(松村雄基)でも出てきたら完璧だったかもね(笑)

でね、先にもちょっと触れた「物語も演技もユルユル」っていう感じって、多分当時の「ビーバップ~」やら「湘南爆走族」やらを観ていた人ならご理解いただけると思うんですが・・・ホントにこんな感じだったのよ(笑)

「おうおう!どこみて歩いてんだぁ~?あ~~ん?」
「ス、ス、スゲェ・・・・」
みたいなセリフを見事なスティック(棒読み)で演じちゃうのがむしろ普通で、それも込みで笑いながら観るっていうのがこの当時の「ヤンタメ映画(ヤンキー×エンタメ)」の良さでもあったんですね。

そして、そこをご理解いただいた上でこの作品を観ると、何とも忠実に「あの頃」を演じ切っているんですね。
逆に、もし「演技がヘタ」とか「脚本が・・・」っていうところに引っ掛かったんだとしたら、それはまんまと制作側の意図するところにハマったんだと思いますよ。

ハッキリ言えば、この作品はその辺をあえて「アップデート」させずに、あの頃のテイストを忠実に再現することを目的とした「復刻版映画」でもあるんですよね。
だからこそ、僕はこの作品を観て「チェリオ」の味を思い出すことも出来たわけだし。

テルの口から「シャバ憎がぁ!」とか「いいボンタン履いてるねぇ」とか「どぉせ数が多いだけのチンピラの集まりだろぉ!」とかのセリフが飛び出す度に(それ!)って膝を叩きたくなっちゃう(笑)

・・・・あ、なんか結構熱く語っているみたいな感じになってますけど、そんなに優れた作品ではないですよ、予め(^-^;
下手すりゃ普通の自主製作映画レベルの内容かも。

でも、僕はこの作品にそういうクオリティは端から求めていないし、逆にどこまでふざけてくれるのか?の方が楽しみだったから、これはこれで良かったと思う。

・・・にしても、清水宏次朗は復活出来るのかな?
若い頃はバッキバキに決まっていた印象だけど、今作では見るのも辛くなるくらいに老いていて、テルと同年代には見えないくらいの「お爺ちゃん感」がハンパなかった。
当然アクションなんかは全く出来ないし、「画面には出てるけどストーリーには居ない」っていうくらいに空気だったし、セリフも活舌が悪すぎて「ん?ん?」って聞き直しちゃったくらい。
ここはちょっとリアルに切ないポイントだったかな・・・。

あと・・・・・・
もし、我王銀次さんがご存命だったら、きっとこの作品にも出ていただろうな・・・・って。
「湘爆の原沢」か「ビーバップの嘘つき丸野」か「名門!多古西応援団の橘薫」か・・・
きっと彼ならこの映画でも存在感ピカイチだったろうな・・・・。


よし、久し振りにミリンダと並ぶマストアイテムだった「うまい棒」と「ブラックサンダー」でも買って帰るか。
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