“Do not eat, taste”
レイフ・ファインズとアニャ・テイラー=ジョイ主演の「密室サスペンス」系ダークコメディ。序盤から映像も音効もいい感じ。
孤島にある、ひとり数十万円、招待制のレストラン。レイフ・ファインズ演じる独裁的なシェフと、料理に集中するため軍隊生活を強いられているスタッフたち。
ある日招かれた招待客には、険悪な金持ち夫婦、料理評論家と担当記者、落ち目の俳優と愛人、オーナー企業の部下たち、グルメおたくと主人公マーゴ…といったいけすかない面々。マーゴは明らかに場違い。
すべてがつつがなく統制されているように見えるこのレストラン、メニューが進むにつれ次々と違和感が増していく。
と、あらすじはこれくらいにしておいて・・・ (以下、すこしネタバレ含みます)
本作、ストーリーはミステリーとは呼べないほどシンプル。ホラー度も低い。
ベースとして、権威やお金や流行やプライドに踊らされ、本質(この場合は味)に目をとめない人々を描き、痛烈に批判。
その裏側で、シェフが店のコンセプト、スタイルを客に強硬に押し付けてくる姿に嫌悪感と恐怖を抱かせる。
僕はグルメでもないし、気に入った店に何度も通い倒すほう。できれば団体客が来ないカウンター+αくらいのお店のほうが好きなのだが、そういう店では(”食事+会話+居心地”は最低限として)スタッフと客が、一定の暗黙のルールのもとに、”お互いに”心地よくなれるかどうかも重要。
しかし、本作にそれを満たせそうな客は皆無であり、店の側も最初から客を楽しませることをほっぽらかしてルールと執念を貫こうとしている。
終盤、マーゴが計画されていたメニューを瓦解させていくのだが、シェフの行動もすでに合理性に欠けている。(ブラウン大学の件もねw)
”本来きみは奪う側ではなく与える側の人間のはずだ”
・・・とのシェフの言葉は、シェフ自身にも突き刺さる諸刃の刃だったのだろうか。
ずっと悲しげに飲んだくれていた母親。
壁に飾ってあった彼の原点であろうハンバーガー屋?での写真。
そして本質的な部分に関しては、主役ふたりの表情だけに語らせていた。
おいしそうにハンバーガーを食べるマーゴに微笑むシェフ。
船の上でハンバーガーをほおばるマーゴ。
謎解き的な面白さは無かったけど、なかなかの味わいのある作品でした。