るるびっち

ザ・メニューのるるびっちのレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
1.3
『ジョブチューン』というTV番組で一流シェフ気取りの連中が、庶民が通う有名店の料理を審査する。
ヤラセかは知らないが、何様だと思う。
権威がそんなに偉いんかい? 
そもそも庶民店の舌と高級店の舌は違うだろう。
店側も一流シェフより、来てくれる庶民の舌を信じるべきだろう。
不合格を出したシェフ達の横で、腹をすかせたガキがジャンクフードを齧り「死ぬほどウメェ~」と言ったら胸がすくだろう。
その程度の内容だが、劇中のシェフ同様気取った映画なので痛快さは薄い。

権威主義のシェフの狂った料理を、有難がる客の愚かさ。
同時におもてなしの心を忘れ、品のない客を怒るシェフの傲慢さ。
どちらも愚かだ。
客が料理名も憶えず、会話に夢中で食事に集中していないと怒るが、それはお前の料理がその程度だからだろう。
本当に美味しかったら、憶えるし会話もしないよ。
権威主義に乗っかって本質を見失うのは、客もシェフも同罪。
権威だから美味いと盲信する客はバカ。
一方、おもてなしや人を楽しませる心を忘れ、客に悪態をつくシェフは傲慢。

そして、この映画は減塩の薄味。
もっと濃く味付けしてくれないと、ジャンクフード育ちの身には解らない。味がボンヤリしてる。

権威主義や反論しづらい場の空気に支配される愚かさを批判するなら、もっと味付け濃くやってくれ。退屈だ。
例えば権威主義者のシェフは実は認知症で、段々悪化して常軌を逸した料理を出してくる。
しかしシェフ以上に、権威や他人の評価に従う自己のない客たちが美味しい美味しいと、もはや料理ですらないものを喜んで食べる。
ついに狂ったレイフ・ファインズは巨大なうんこを皿に載せて来る。
客は勿論、美味しい美味しいと食べる。
「どこ産のうんこざます?」
「本日とれたてのイタリア産でございます」
「どうりで新鮮!! 強烈な臭いざます~!!」
「食材には気を遣い、世界三大珍味を食べ続けた男のうんこですから、この上ない美味でございます~」

それぐらいやってくれたら笑うけどな・・・
いや、むしろ引くか?
いずれにしろ、権威に従う人々の愚かさを描くなら童話『はだかの王様』の方がシャープだし痛烈で判り易い。
『はだかの王様』は未来永劫残る。誰もタイトルを忘れない。
本作を十年後、憶えてる人がいるかな?
料理同様、憶えていないのは客のせいじゃない。

女性が口拭いた程度の事が、男性社会へのカウンターだとしたら緩い。やっぱり「王様は裸だ!」の方が痛烈だ。
喰った気しない、離乳食だよ。
薄味の離乳食映画。バブバブ~。
るるびっち

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