暴れムクドリ

FALL/フォールの暴れムクドリのレビュー・感想・評価

FALL/フォール(2022年製作の映画)
4.0
登場人物の少なさに感じる低予算感やストーリーの様々な粗を、本能的な高所への恐怖という圧倒的な説得力でねじ伏せてくる作品なので、脚本に粗があるとどんなに映像がよくても気になって楽しめないという人には向かないと思う。またガチの高所恐怖症の方は絶対に見ない方がいい。

まるで体調が悪い時にうっすらとした吐き気が長時間残り続けるように、高所に対する本能的な恐怖(いわゆるタマヒュン感)が2時間ずっと続く。それを節々で感じさせる演出が恐ろしい。

!!以下ネタバレ注意!!


本格的に恐怖にみまわれるのは頂上に着いてからだが、そこに至るまでに様々な不安を煽る煽る。ハゲタカは飛び回るし、はしごのボルトはカタカタするし、柱を支えるワイヤーはきしむし、水は少ないし、やたら薄着だし(笑)

主人公2人は元々頭のネジの外れた高所ジャンキーであり今回の塔に登る動機も合理性に欠けるので、普段であれば一般の観客が感情移入するのには難しいキャラクターなのだが、上記の演出と共に誰もが持つ高所に対する本能的な恐怖を呼び起こされてしまうのでいつの間にか彼女らに自己投影してハラハラすることができた。

そこまでガッツリのめり込めるので、何回かチャレンジする生還策が失敗する時には心からガッカリするし、ハンターの死が判明するシーンは本当に衝撃を受けるし、主人公と一緒になって様々な絶望を楽しめた。

また、ツッコミどころだらけな行動の合理性の無さについても「こいつら元々こんな遊びを好きでやってるヤバい奴らだしそこツッコむの野暮だな…」となるのが強い(笑)

さて、物語ラストにベッキーは救難信号が受理されあっさり救助されるが、果たしてあれが本当にベッキーの見た幻ではないと言い切れるのだろうか…?

上映劇場も少ないしそのうちすぐにサブスクで配信されそうな雰囲気を感じるが、大画面と音響で没入して高所の恐怖を体験できる映画館でこそ絶対見てほしい一本です。
暴れムクドリ

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