るるびっち

FALL/フォールのるるびっちのレビュー・感想・評価

FALL/フォール(2022年製作の映画)
4.0
生きる気力を失った女性が、死に直面することで生命力を取り戻す話。
平地では見えなかった様々な光景が、高い塔に登ることで見えるようになる。視点が変わるのだ。
親友や恋人の裏の顔、父親への想い。
絶望の中、生きる執念を学び希望を見いだす。
ラスト10分で生まれ変わったように大胆になる。
ハゲタカに攻撃され続けるが、生まれ変わった彼女はそれを乗り越える。
静かな眼差しを送るだけでハゲタカが逃げだすのは、生きる気力に満ちた存在に生まれ変わったことを表しているのだろう。
死体にたかる彼らは、生命力に満ちた者にはとりつかない。

主人公は最初に問題を抱え、非日常の冒険の中で乗り越えていく。冒険の中で命の極限に気付く。そこからどう生まれ変わるかが、人物の生き様を描くことになるのだ。
本作では観客の予想を超える壮絶で非常な決断が描かれる。
つまり常人では敵わない苦難を乗り越えたことを示している。
やり過ぎなのではなく、常人レベルでは生きて帰れぬ苦難を乗り越えたことの表現なのだ。
こうしたアイデアが大切だと思う。
最初の主人公が抱えた無気力と厭世観は、塔の上からフォールされたのである。

海外版に比べ日本版ポスターは、同じ写真でも不要な説明で空間をびっしりと埋めて高い塔の恐怖を台無しにしている。
何も無い空間の広がりこそが効果的なのに。
説明しないと伝わらないという自信のなさが現れているのだ。
空間の効果より、過剰説明を選んだのである。
いい加減、そうした自信のなさを日本企業はフォールしなければいけない。
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