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オレの記念日のQMのレビュー・感想・評価

オレの記念日(2021年製作の映画)
5.0
・先日の元大臣による「死刑はんこ」発言にもやっとしていて時々思い出す。あのおじさん自身が出世ルートにいないことをボヤいただけなのだそうだが実際法務省主幹の重要イシューは沢山あって。そのひとつとして袴田事件が話題にあがっていたのをきっかけに。

・『冤罪』というテーマを前にしてせっかくの休みに重い話はちょっとなぁと躊躇する人にこそ、ぜひ気軽に観てほしい!私は久々にたくさん笑った。というのが、この映画の中心人物の桜井さんが奇跡的と言えるような人格者で、もっとこの人の話を聞きたいと思わせる、人を惹きつける魅力とユーモア、強いエネルギーをもった方。彼自身も(自分が冤罪にかけられたことを)"選ばれし者"と冗談混じりに言っているのだが、現在の社会運動を統率する流れまで含めて本当にそうなのかも?と思ってしまうほど。申し訳ないけど。

・同じ刑務所にいる人でも、実際に犯罪を犯した犯人と冤罪犯ではまったく違った苦しみがあるし、冤罪の中でも無期懲役と死刑でもまた違う苦しみがある。ただ、冤罪にかけられた人の苦しみは想像しえないほどのもの、自分が認識する「真実」と周りの人間たちや社会の「真実」が正反対なのだから。作品の中でも少し出てくるが、長期間にわたる過度の抑圧は人格を蝕む。何十年も折られたり捻じられたりしていたらバラバラになって何も信じられなくなるのは当然。

・裁判所や検察警察についての具体的な問題提起や改善のための行動喚起というよりは、それを生んでいる、空気で物事が動く、逆を言えば空気でしか動けない。長いものにまかれないと動けない。組織の論理でしかものを考えられない。それでいいの?と個人レベルの思考に訴えるメッセージだった。事件の概要が知りたいならぐぐればいいし、司法の問題点が知りたければ他でたくさんソースはありますしね。

・「(冤罪犯は)やってないから(苦痛に)耐えられる」

・失ったものに目を向けるのではなく、あるもの、得たものに目を向ける
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