TaiRa

丹下左膳餘話 百萬兩の壺のTaiRaのレビュー・感想・評価

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)
5.0
久しぶりに観たら世界一面白かった。これ撮った時の山中貞雄、まだ二十五歳なのびっくり。

ホントは『丹下左膳』三部作の最終作だったのを監督交代に伴い山中が好きに作って「余話」扱い。男・女・子供の関係性はスティーブン・ロバーツの『歓呼の涯』を真似したらしい。大河内傳次郎の丹下左膳が北野武に見える瞬間あったんだけど。特に子供と絡む時。動きとか喋り方でね。下町のぶっきらぼうな男の所作なのかな。何度も繰り返される否定〜ワイプ〜逆転のギャグが一々笑える。編集というか構成というか、話上手な作風。冒頭でもやってるけど、一つの会話・台詞を流しながら画だけはどんどん時間を進め、次の会話に間を置かずに展開するの良いよね。話運びで一瞬もダレない。一方、子供が寺子屋でイジメられてると知った大人二人がついて行こうかどうか迷う時間の描き方とか、ジリジリとしていて良い。黙った人の撮り方がなんか凄い。特に女性。父の死を報された子供の悲しみを背中だけで見せるとことか、言葉にも芝居にも頼らない。縁側に黙って座る子供の背中を少し引いた位置から見守るだけ。夜道の斬り合いにおける演出も粋で緊張感あって最高。クライマックスの戦闘は観たことある気がしたけど削除されてんだよね。勝手に脳内補完してた。ラストのオチもそうだし台詞の端々にも繰り返しが印象的に使われてて、そういうとこがモダンな感じがするな。
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